2022年1月14日号 Vol.413

脅威ではなく尊ぶべき存在
サメの多様性と必要性
アメリカ自然史博物館「シャークス」展

①多様なサメの模型を展示した「パレード」のコーナー(Photo by D. Finnin / © AMNH)

アメリカ自然史博物館で昨年12月15日から、サメに特化した新展示「シャークス(SHARKS)」が始まった。体長5インチから33フィートまで、さまざまなサイズの原寸大モデルを通じ、サメの多様性を強調。先史時代と現代の種、生息地、狩猟スタイル、さらにサメが直面している保護への緊急課題についても解説する。



「サメ」といえば、映画「ジョーズ」に代表されるように、「恐ろしい怪物」という印象があり、実際、海でサメに襲われたという事故は度々報道されている。

サメの進化の歴史は非常に長く、地球で誕生した樹木や顕花植物、恐竜の出現以前から存在する。今日では540種以上のサメと670種以上の近縁種(エイや、ギンザメなど)が、暖かいサンゴ礁海域から、冷たい南極・北極海域、さらに淡水河川まで、地球上ほぼすべての海洋環境に生息している。

②メガドロンの実物代模型 (All photos by D. Finnin / © AMNH)

本展は、同館コレクションからの化石、古代と現代のサメを比較できる「パレード」=写真①=、インタラクティブなパネルなど、さまざまな視点からサメを身近な存在として認識できるように工夫。中でも、約2300万年前から360万年前に生息した巨大サメで「海のティラノサウルスレックス」と呼ばれるメガロドンの実物大模型=写真②=は圧巻だ。また高さ10フィート、幅37フィートのプロジェクション・スクリーンでは、海で泳ぐサメたちが観察できる。

科学者たちは、サメのみならず近縁種の解剖学や多様性、行動などを解説し、古代から息づくこの「魚類」について、驚くべき多くの事実を明らかにしている。

メガドロンの歯の化石 (All photos by D. Finnin / © AMNH)

同館の魚類学部学芸員で同時に「サメ」の学芸員でもあるジョン・スパーク氏は、「サメが『大きくて悪質な捕食者』という認識は、 事実と大きく懸け離れている。彼らは、生息域の生態系を健全に維持するため、重要な役割を果たしている生物グループであり、地球環境にとってはサメよりも人間の方がはるかに脅威的だ」という。サメについて科学的な情報を提供することで誤った認識を正し、サメが自然界に不可欠である理由や、脅威ではないことを解説する。

スパーク氏は、「この展示により、サメが『恐れられる存在』から、『尊ばれる生き物』として理解されることを願っている」と述べている。

SHARKS
■2022年8月14日(日)まで
■会場:American Museum of Natural History
 200 Central Park West
■General Admission + One:
 大人$28、3-12歳$16.50、学生/シニア$22.50
www.amnh.org


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