2019年4月12日号 Vol.347

知られざる傑作集め
「もうひとつの日本のヌーヴェルヴァーグ

~1958〜61年のラジカル映画~」

血は渇いてる
「血は渇いてる」Blood is Dry. ©1960 Shochiku Co., Ltd.

悪人志願
「悪人志願」The Samurai Vagabonds ©1960 Shochiku Co., Ltd.

彼女だけが知っている
「彼女だけが知っている」Only She Knows ©1960 Shochiku Co., Ltd.



ジャパン・ソサエティー(JS)が4月5日(金)から27日(土)まで、特別上映会シリーズ「もうひとつの日本のヌーヴェルヴァーグ~1958〜61年のラジカル映画~」を開催中だ。日本語上映、全作品英語字幕付き。全作品18歳以上対象。
「日本ヌーヴェルヴァーグ」とは、第二次世界大戦後の高度経済成長期だった1950年代末から70年代にかけて出現した、日本映画のムーブメント。政治や性、犯罪者側から見た犯罪など、あまり描かれない題材を扱うのが特徴だ。こうした作品では、大島渚監督や篠田正浩監督が世界的にも評価されている。
今回の上映会シリーズでは、巨匠ではなく、蔵原惟繕監督や山際永三監督など、あまり世に知られていない監督の作品に注目。米国未公開の作品や、短編11作を上映する。
キュレーターは、明治学院大学言語文化研究所研究員で、日本映画評論家・映画研究家の平沢剛氏。当時、観客動員数の減少を案じた大手映画会社の撮影所は、新人監督を起用し、若年層をターゲットにした長編作品を製作していた。松竹に所属していた森川英太朗監督の「武士道無残」(1960年)や、高橋治監督の「彼女だけが知っている」(1960年)など、今まであまり語られることがなかった監督の作品を取り上げている。

【作品紹介】
「われらの時代」▼監督・蔵原惟繕

大江健三郎原作、白坂依志夫脚本、蔵原惟繕監督の問題作。フランス留学を目指す主人公が、日常的、社会的な矛盾や葛藤に苛まれながらも、何の選択もできずにだらしなく生き続けていく。

「狂熱の季節」▼監督・蔵原惟繕
先駆的実験を試みた蔵原監督による日活ニューウェーブの代表作。少年鑑別所を出たばかりの2人の男と女友達が、無為な悪事を繰り返し、新聞記者の男とその恋人を巻き込んでいく。

「血は渇いてる」▼監督・吉田喜重
マスメディアと広告業界を主題に、その消費至上主義を痛烈に批判した吉田監督の第2作。会社からの解雇通告に抗議し、他の社員を救おうと拳銃自殺を図った男が一命を取り留めると、一躍時代の寵児となる。

「悪人志願」▼監督・田村孟
田村孟が松竹時代に監督を務めた唯一の作品。ある鉱山の飯場を舞台に、心中に失敗し生き残った女と、長男を失った有力者の一族、逃亡中の殺人犯らが、異様な関係性を織りなす愛憎劇。

「武士道無残」▼監督・森川英太朗
森川自身の脚本で演出された時代劇ヌーヴェルヴァーグの第一弾。殉死を強要された若侍と、その兄夫婦が、武士道に翻弄されていく様を、それぞれの生と死、そして性を通じて描かれた不条理劇。

「彼女だけが知っている」▼監督・高橋治
高橋監督のデビュー作品。連続強姦殺人事件を担当する刑事の娘が、4人目の被害者となる。娘は一命をとりとめたものの、その家族、許嫁の刑事らの苦悩や葛藤が、捜査の進展とともに描かれていく。

■4月20日(土)
 4:30pm「われらの時代」
 7:00pm「狂熱の季節」
■4月23日(火)
 7:00pm「血は渇いてる」
■4月26日(金)
 7:00pm「悪人志願」
■4月27日(土)
 5:00pm「武士道無残」
 7:00pm「彼女だけが知っている」
■会場:Japan Society
 333 E. 47th St.
■一般$14、シニア/学生$11
 JS会員$10
 ※3作品以上同時購入で各$2引き
■TEL: 212-715-1258
www.japansociety.org


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