2019年4月12日号 Vol.347

神々を巡る壮大な物語
ニーベルングの指環 (2)
「ジークフリート」「神々の黄昏」

オペラ
「ジークフリート」A scene from Act I of the Met's new production of Wagner's "Siegfried." Photo: Ken Howard/Metropolitan Opera. Taken during the rehearsal on October 21, 2011 at the Metropolitan Opera in New York City

オペラ
「神々の黄昏」A scene from Wagner's "Götterdämmerung" with the Norns (Elizabeth Bishop, Maria Radner, and Heidi Melton).Photo: Ken Howard/Metropolitan Opera. Taken during the rehearsal at the Metropolitan Opera on January 13, 2012


1864年ごろから、ワーグナーは自身の楽劇上演の理想を実現させるためにバイロイトに新しい劇場の建設を計画した。ワーグナーの崇拝者でパトロンでもあったバイエルン国王ルートヴィヒ2世の莫大な援助を得て、1872年に着工、こけら落しは1872年8月13日。H・リヒター指揮、ワーグナーが自ら演出を手掛け「ニーベルングの指環」が上演された。作曲家が演出を手掛けるのはワーグナーが先駆けだった。客席にはルートヴィヒ2世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世、リスト(ワーグナーの妻コジマの父親!)、チャイコフスキー、ブルックナー、ニーチェなどヨーロッパ各地のセレブが一堂に会した。ワーグナーの死後も、妻のコジマ、息子ジークフリートらが遺志を引き継ぎ、現在もその子孫たちによって音楽祭は継続されている。
バイロイトはバイエルン州北東部にあり、ちなみに2019年は7月25日から8月28日まで、「タンホイザー」「ローエングリン」「パルジファル」「トリスタンとイゾルデ」「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の5作品が日替わりで上演される。
メトロポリタン歌劇場では、ニーベルングの指環の上演に関連した様々なフリー・イベントが行われる。詳細はオフィシャルウェブサイトで。

前回に続き今回は4部作の内、「ジークフリート」と「神々の黄昏」を紹介しよう。

ジークフリート
▼あらすじ

双子の兄と妹、ジークムントとジークリンデの間に生まれたジークフリートは、森の中で小人族のミーメに育てられた。成長したジークフリートは、父親が決闘で折られた名剣ノートゥングを見事に鍛え上げる。恐れを知らぬこの若者は、大蛇に変身した巨人族のファフナーをノートゥングで退治し、指環を手に入れる。ジークフリートは、自分を毒殺して指環を奪おうとしたミーメを殺す。ファフナーの血をなめたジークフリートは、小鳥の声が理解できるようになり、小鳥に導かれて後に妻となるもジークフリートを死に至らしめるブリュンヒルデの眠る岩山にたどり着く。立ちはだかるさすらい人(実はヴォータン)の槍をも打ち砕き、炎の壁を越えて、ブリュンヒルデを深い眠りからめざめさせる。生まれて初めて出会った「女性」に初めて「恐れ」を感じるジークフリートだったが、ふたりは固く結ばれる。

神々の黄昏
▼あらすじ

ジークフリートは、指環をブリュンヒルデの指に残し、旅に出る。ミーメの兄アルベルヒの息子ハーゲンは、異父兄でギービヒ家の長グンターを唆し、旅の途中で訪れたジークフリートに忘れ薬を飲ませて、妹のグートルーネと結婚させてしまう。ブリュンヒルデも岩山から連れ出され、グンターとの結婚を強いられる。ジークフリートに裏切られたブリュンヒルデは、ハーゲンに彼の弱点を教えてしまう。狩りの途中で道に迷ったジークフリートは、ハーゲンに唯一の弱点である背を槍で刺され息絶える。ライン河のほとりのグンターの城にジークフリートの遺体が運び込まれる。ブリュンヒルデは、ライン河畔に薪を積み上げ、ジークフリートの亡骸を焼き、その炎の中に馬で飛び込んでいく。天上のヴァルハラ城も炎に包まれ、氾濫したライン河が全てをのみ込み、指環は再びラインの川底に沈む。(針ケ谷郁)

DER RING DES NIBELUNGEN ニーベルングの指環(4部作)
ラインの黄金/ワルキューレ/ジークフリート/神々の黄昏
○サイクル1:4月13日(M)・27日(M)
○サイクル2:4月29日・30日・5月2日・4日
○サイクル3:5月6日・7日・9日・11日

Siegfried ジークフリート
■4月13日(M)、5月2日、9日
■リヒャルト・ワーグナー作曲 ドイツ語上演
■初演:1876年8月16日バイロイト祝祭劇場
■演出:ロベール・ルパージュ
■指揮:フィリップ・ジョルダン
■配役:ジークフリート:アンドレアス・シャーガー/シュテファン・フィンケ
ミーメ:ゲルハルト・ジーゲル
さすらい人:ミヒャエル・ヴォッレ
アルベルヒ:トマス・コニエチュニー
ファフナー:ドミトリー・ベロセルスキー
エルダ:カレン・カーギル
ブリュンヒルデ:クリスティーネ・ゲルケ
鳥の声:エレン・モーリ

Gotterdammerung 神々の黄昏
■4月27日(M)、5月4日、5月11日
■初演:1876年8月17日バイロイト祝祭劇場
■配役:ブリュンヒルデ:クリスティーヌ・ゲルケ
ジークフリート:アンドレアス・シャーガー/シュテファン・フィンケ
グンター:エフゲニー・ニキティン
ヴァルトラウテ:ミヒャラ・シュースター
ハーゲン:エリック・オーウェンズ
アルベルヒ:トマス・コニエチュニー

■212-362-6000
www.metopera.org


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