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Ellsworth Kelly, Painting in Three Panels , 1956
© Ellsworth Kelly Foundation. Photo by Ron Amstutz; Courtesy Glenstone Museum
Ellsworth Kelly, Yellow Curve, 1990
© Ellsworth Kelly Foundation. Photo by Ron Amstutz; Courtesy Glenstone Museum
Jeff Koons, Split-Rocker , 2000
© Jeff Koons; Courtesy Glenstone Museum
風光明媚な個人美術館で E・ケリー回顧展
グレンストーン美術館
Ellsworth Kelly at 100
■ 2024 年 3 月まで 木〜日:10am 〜 5pm ■会場:Glenstone Museum 12100 Glen Rd, Potomac, MD ■入館無料
■ www.glenstone.org
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グレンストーン美術館「パビリオン」全景
Photo by Iwan Baan; Courtesy Glenstone Museum
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れ有名美術館に寄贈 週に2日のみの公開 されたり、オークショ だったが、2018 ンで売却されたりす 年に「パビリオン」と るものだが、近年は、呼ばれる新館がお披 自ら美術館を立ち 露目され、今では週 上げる人(夫妻)が増 4日オープンとなって えてきた。ニューヨー いる。
常設作品ばかり いわば機械的な抽象 か、エミリー館長の 画のようだ。だが、 企画による特別展も 1950年代の初期 注目である。この夏は、の絵画には、「窓」や モノクロームの抽象画 「セーヌ川」といった で知られるエルズワー 題名にもある通り、 ス・ケリー(1923 日常の中のジオメト
を受けてパリに留学 した。その滞在は、 1948年から約6 年間に及び、結果と して、戦後アメリカ 美術を代表する抽象 表現主義の動向とは 離れたところで独自 の絵画を模索するこ とになった。 帰国後、 年には ニューヨークの画廊で 初個展。同年制作の
ギャラリーの広さ 〜2015)の生誕 リーとの関係性が浮 うしたケリーのキャリ もさることながら、 100周年を記念す かび上がる。この点 アの節目となる作品 300エーカーといわ る回顧展が登場。夫 は、ケリーが撮り溜 が登場し、中でも白 れる敷地全体がとに 妻の蒐集品のほか、めたモノクロ写真の 眉は、常設ギャラリー かく広い。駐車場の 欧米の美術館から借 モチーフも同様で、の一室を使った「黄色 先にある到着ホール り出された代表作が なだらかな丘陵のカ のカーブ」の展示であ を経て、パビリオン 揃い、絵画、彫刻、ーブ、ハイウェイの白 る。床に置かれたそ からカフェ、本館へと ドローイング、写真 線、道路に立つポー の「黄色」は、柔和な 続く遊歩道はそれぞ など、 年近いケリ ルとその影など、私 スカイライトを浴び れ距離があり、周囲 ーのキャリアを網羅す たちの周囲にあるさ て燦然と輝いている。
クのフリック・コレク
ションやモーガン・ラ
イブラリーなど、
世紀初頭に頻出した
富豪美術館の再来で
ある。
そうした個人コレ
クターによる美術館
の中でも全米で最大
規模を誇るのが、ワ
シントン の郊外 にはジェフ・クーンズ る構成となっている。 まざまな形に反応し にあるグレンストー の花畑彫刻やマイケ ハードエッジと形容 ているようだ。 ン美術館だ。ミッチ ル・ハイザーの大地を されるケリーの絵画 ケリーは、第二次
グレンストーン美 術館は、ワシントン 市内の多くの美術館 同様、入館は無料。 市の中心部から車で
アメリカのお金持 ェル&エミリー・ワ 切り裂くスチール彫 は、筆触も色ムラも 世界大戦の勃発によ ちといえば、職種を イ・レイルズ夫妻に 刻など、大型の野外 ない完璧な塗りによ り 歳で陸軍に入 問わずアート作品を よる現代アートのコ アートが点在している。る画面に特徴があ 隊し、戦後、 集めている人が多い。 レクションで、開館は まさに森の中の美術 り、色と形、平面性 ビルと呼ばれる「復 作品の多くは、いず 2006年。当初は、館だ。 のみが強調された、員兵援護法」の助成
分ほどかかるが、 実は、メトロとバスを 利用すれば美術館の 駐車場に直行できる。 地下鉄レッドライン のロックビル駅(メリ ーランド州方面の終 点駅の一つ前)からロ ーカルバスで 分ほど
「3枚のパネルによ る絵画」は、翌年のホ イットニー美術館の絵 画展に選ばれる。単 色や、複数の色の組 み合わせによる画面 は、やがて菱形や一 部丸みを帯びた変形 キャンバスへと移行し、 1971年には、複 合キャンバスによる「チ ャッサム」シリーズを 発表。本展には、こ
(藤森愛実)
(片道2ドル)。通常、 入館には事前予約が 必要で2ヵ月先まで 埋まっているという状 況だが、このバスで 到着する観客はフリ ーパスというのも嬉し い。初夏から紅葉の 秋にかけて、ぜひ一日 ゆっくりと訪れてみた い美術館である。