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最初に遭遇したビッグニ ューズは、6月3日に起 きた九州・雲仙普賢岳 の火砕流惨事だった。テ レビ朝日報道局から出 張取材にあたっていた若 い記者が一人呑み込まれ て犠牲になった。自然の 猛威に度肝を抜かれた が、天災に抗する術はな い。専門家をスタジオに 招いて火山噴火のメカニ ズムを説明してもらう しかなかった。火山国日 本には噴火の危険が至る 所に存在する一方、世界
よう、また法の壁を乗 んでいた。 隠しの「飛ばし」という する営業特金を武器に れた圧倒的多数の一般庶  親しい友人からは「株  証券業界のトップと自 り越えることのないよう  主に大手企業である 手法も横行した。 業績を向上させようと、 民が、いつまでも大人に 屋に品性を言ったって、 他ともに認める野村證
3位の地熱資源国だが、 それを恵みに換えて活用 する途は進んでいない。  やがて人間臭い事件が 発覚する。大手証券会 社が根こそぎ関わった不 祥事だった。  株式市場というのは、 ある意味で壮大なギャン ブルの場である。賭場で あり鉄火場である。証 券会社というのは、そこ に客を引き込む誘導役 であり、取引の仲介役で もある。客は巨額のカネ をそこに投ずるから、誘 導役であり仲介役でもあ
世紀入り直後に刊行
した『卒業生列伝――日
本の知性と感性』という
本で取り上げてくれた。 履歴書』を書いた古賀信
Untitled,(Detail 71)
取引から生じた損失は  ただでさえ競争の激し ステムがよくよく閉鎖的 る行為を繰り返してき  1893年の第1回 証券会社が負担し補償 い証券各社は 年代半 で、その閉鎖された囲い た。公正・透明である 卒業生(当時は東京高 する暗黙の約束があり、 ばに始まった金融・証券 の中にいるごく一部の人 べき市場が闇に閉ざされ 等師範学校附属)から 利回りの保証まで約束 の自由化で、大手企業 間たちが、不当かつ法 腐敗することは、その国 1985年卒の 回生
国際ジャーナリスト 内田 忠男
 時間軸を少し戻そう。 る証券会社にさまざま 行が介在するはずなの する「握り」や「胸叩き」、 による市場での資金調達 外な利益を独り占めす の資本主義そのものが腐 に至る卒業生の中から  1991年4月から な情報と便宜の供与を だが、実際の運用では、 損失が出た場合には、 が広がり、銀行も加わっ る不合理な現実――し 敗していることを意味す 100人余が選ばれ紹 夕方のネットワークニュ 求める。求められた側は、 顧客と証券会社がじか その有価証券を他企業 た顧客獲得競争に直面 かもこの「不当かつ法外 る。その国の品性が疑わ 介された中に、取り上 ースのアンカーとなって、 客の間の公平性を損ねぬ に株売買の一任契約を結 に転売してしまう損失 し、顧客の利益を保証 な利益」のラチ外に置か れる。 げられていた。
細心の注意をすべきなの 顧客からすれば、株式  当時の証券取引法で 特金の内容を顧客本位 だが、往々にしてその境 投資の利益だけを求め、 は、証券会社が事前に に拡大していった。「決し 界を超えてしまう...... 損失リスクは最小限にし 損失補償を約束して勧 てお客様に損はさせませ そうした連綿たる関係 たい。そこで相場の専門 誘することは禁じられて ん」と売り込み、成功す
なれない......ともすると お門違いだ。彼らにそん 券は、この後も、 年 感性麻痺の状態に陥って なものを後生大事にする 代後半に総会屋親族企 いることに、不快感を超 気などあるはずがないじ 業への利益供与事件を起 えた怒りの感情を募らせ ゃないか」と、私の憤懣 こし、2012年には
の中で、証券不祥事は、 今日に至るまで絶え間な く続いてきた。カネが絡 むと悪知恵が悪知恵を 呼ぶ。  発端になったのは、各 証券会社に対する税 務調査だった。6月 日、証券各社が大口 の顧客に対し、総額で 1700億円にも上る 損失補填をしていたこと が明るみに出たのである。  バブルの絶頂を含め、
知識を持つ証券会社に いたが、事前の約束なし れば証券会社の恣意に すべてを委ねてしまうの に損失が生じた後、そ 任される売買取引から が営業特金で、委託す れを補償することへの禁 生ずる取引手数料を荒 る側は投下する金額だ 止規定はなかった。この 稼ぎする好餌が待ってい けを決め、売買する銘 ため、すべてが事後的な た。株式市場が好調の 柄・数量・価格などは 補償として処理されてい 間は良かったが、 年1
ていた。物事のけじめや 責任をあいまいにする慣 行と国民性は、「品性・ 品位・品格」を著しく欠 いて、国際社会から「異 端」と見られる元になる、 と痛感したものだった。  私はこの時代、この「品 性品格」が気になって、 番組でもしばしば口にし ていた。  株式市場は資本主義 の象徴ともされる。資 本主義というのは、資 本、つまりおカネが経済 活動の軸となって無限の 利益を求めて競争する もので、むろん、そこに
を笑われることもあった。 インサイダー取引が発覚、 しかし、見ている人はい 年には、東京証券取 るもので、私の母校、東 引所の市場区分の見直 京教育大学附属中・高 しに関する重要情報を 校(現在は「筑波大学附 機関投資家に漏洩して 属」)で 年間、教官を 取引を勧誘するなど、 務めた山口正という人が、 看過できない不祥事を繰
証券会社に丸投げする。 た。
月から株価が急落に転
じたことで客の口座に損
失が広がり、補填の額
が急増したのだった。
 これと前後して、野
村證券、日興証券の金
融子会社が闇社会の暴
力団幹部に資金を融資
していた疑惑も浮かび上
がっていた。
 野村・大和・日興・
山一の4大証券の社長
が国会に証人喚問され、 は厳正なルールが求めら 不公正な取引と裏の業 れ、すべての市場参加者 務に世論の反発が高まっ に公平・平等・公正か た。 つ透明性を持って適用さ  私自身も、この国のシ れなければならない。と
年代は長期にわたって
株価が上昇したことで、
企業は証券市場での資
金調達を強化し、調達
した資金を再投資して
更なる収益を上げる「財
テク」に力を入れていた
が、その過程で、「特定
金銭信託=営業特金」と
いう取引一任勘定による
運用が一般化していた。
仕組みの上では、顧客と 品位・品格の向上を すべき証券会社が、しば 生活の長い内田忠男で 証券会社の間に信託銀 しば公然とルールに反す す......
之氏にしても。こうした 不祥事に触れていないわ けではないのだが、筆勢 すこぶる鈍く、深い反省 が刻まれているとは到底
幼児性からの脱却と ころが日本では、この根 源的原理を守護・実行
品位品格の向上を、少 し真面目に考えた方が 良い。この地球上でそれ なりに名誉ある地位を 得たいと思うなら」と述 べて、すでに 年以上 前に「品格」のことを論 じていたのは、アメリカ
 この会社には多数の知 性優れた「附属」卒業生 も入社しており、その中 の何人かとは親しく付 き合っていたが、トップの 地位を究めた者はいない。 知性と正義感が邪魔し たのではないかと思って いる。
< 最近の話題になった
本に「女性の品位」や「国
家の品格」などというも
のがありますが、「日本
人は過保護がもたらす
幼児性からの脱却と、 感じられない文章だった。
り返してきた。社長か ら会長まで勤め上げて 最近、日経新聞の『私の
(つづく)































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