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 2001 年のジェノヴァ・サミットで小泉首相(右)と筆者
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 サミットと通称される 主要国首脳会議の話を 続ける。  外国で開かれるサ ミット取材の最後は 2003年6月のフラン ス・エビアンでの会合だ
国際ジャーナリスト 内田 忠男 が、直後から、大量破 脳と、国連のアナン事務
った。飲料水で知られる、 あのエビアンだ。フラン スと言ってもスイスとの 国境に近く、私は単身ニ ューヨークからジュネーブ に飛んで陸路エビアンに 入り、東京から来たテレ ビ朝日取材団と合流し た。
連のミレニアム開発目標 の実施に向けた行動計画 を採択。さらにこれもい
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し、世界に広める努力を しよう、という点で、 8参加国首脳の間には確 信が広がり、この点につ いては異論がなかった。  また途上国への開 発協力については、い ま流行の =
  世紀入りした直後
の 年9月 日に起きた
同時多発テロ攻撃で、ア
メリカは「テロとの戦争」 で「議長総括」を発出す
「持続可能な開発のた めの科学技術」の項では、
を呼号して、同年 月に アフガニスタンに攻め込 んだが、 年3月にはイ ラクにも侵攻した。アフ ガニスタンには、同時テ ロを起こしたアルカーイ ダという組織が本拠と言 える訓練基地を置いてお り、それをタリバン政権 が容認していたという明 確な理由があったが、イ ラクについては、ジョー ジ・ ・ブッシュ大統領が
ることにしていた。その 一方で、 8が新しい約 束をするのではなく、こ れまで約束していたこと の実施実現に重きを置 き、テロ対策の強化や、 持続可能な開発の実現 に向けて今後とるべき具 体的行動を列挙した行 動計画などが 本も採 択された。  また、これも議長国の 考えで、中国、インド、 サウジアラビア、メキシコ、 ナイジェリア、エジプト、 南アフリカなど新興市場 国と開発途上国 ヵ国に スイスを加えた各国の首
「よりクリーンで効率的 なエネルギー、大気汚染 と気候変動との戦い」に も言及している。  そしてテロ対策につい ては、「我々は世界中で テロリスト集団と戦う ため対処能力向上に関 する行動計画を採択し、 国連テロ対策委員会を支 援すべく、テロ対策行動 グループを創設した。テ ロと戦う最善策の一つは、 テロを支援する資金の流 れを断つこと。我々は、
「サダム・フセイン(大 統領)がアルカーイダと 密かに通じており、大量 破壊兵器を隠し持ってい る」と主張して侵攻した
各国首脳との信頼関係で 中心的役割果たした小泉首相
発展に貢献できるよう、 改革路線を邁進してゆく ことを強調した」と結ん
出色の丁寧な答えだった。 (つづく)
壊兵器を隠匿している形 総長も招いて、サミット 跡は見つかっていなかった。 に先立ち 8とは切り  このため、フランスや 離した会合も開き、持 ドイツなどは侵攻に正面 続的成長と国際協力の から反対するなど、ロシ 促進をテーマに意見を交 ア連邦が加わって 8と 換した。 なっていた参加国の間で  議長総括では、まず 立場の違いが顕在化して 経済について、「我々の経 いた中で開かれたのがエ 済は多くの課題に直面し
Sustainable Develop-
ビアン・サミットだった。 議長国のシラク仏大統領 は、多国籍軍のイラク侵 攻で意見の違う首脳たち が、率直かつ自由に意見 を交換する環境づくりに 主眼を置き、恒例となっ ていた宣言やコミュニケ は出さず、議長国の責任
ているが、主なダウンサ イド・リスクは後退し、 回復への条件が整ってき た。我々は、自分たちの 経済成長の潜在能力に 自信を持っており、それ ぞれの国が持続的成長を
ま流行の =Digital
確実にする健全なマクロ
経済政策を実施し、多
国間協力を推進する責
任を再確認する。共通
の責任は、我々の経済成
長を高め、より力強い
世界経済に貢献すること
にある」と述べ、労働・
財・資本市場の構造改
革、高齢化社会に向け
た年金・保健改革、教
育改革による競争の助長
と生産性の向上、コーポ
レート・ガヴァナンスの
改善を通じて市場規律
を高め、透明性を拡大
して投資家の信頼を強め
る......などの約束を再確
認した。グローバル化が
本格化して 年が過ぎ、 デルの取組を歓迎し、受 主要国がその恩恵を享受 益国を拡大する」と謳い、
財務大臣に対し、進展 を評価し、次なる手段 を特定するよう指示す る」と書き込まれた。  終わってみれば、「サミ ット形骸化」の批判を多 分に意識したであろうシ ラク仏大統領の並々なら ぬ意欲を反映して、討 議の幅・奥行きの両面で 深みのある対話が繰り広 げられた印象が強かった。 それと同時に、これが3 度目の出席となった小泉 純一郎首相が討論の輪に 積極的に参加し、時に 討論を主導する場面をい くつか見せた点でも印象 に残るサミットになった。  外務省がまとめたエビ アン・サミットの振り返 り文書でも、「小泉総理 は、サミットに先立つ訪 欧、訪米、訪ロなどを 通じて築いた 8各国首 脳との強い信頼関係に基 づき、中心的役割を果 たした」と総括していた。 外国開催のサミットで「中 心的役割を果たした」と 断言できる日本の首相は 過去にいなかったし、そ の後もいない。  小泉首相自身も、サ ミット終了後の内外記者 会見の冒頭で、「当初、 イラク問題などで(参加 国間の)対立が指摘され、 協調体制は如何かと懸 念する向きも多かったが、 実際に始まってみると、 途上国と 8各首脳と
だ。この「改革」こそが 小泉政権の目玉だった。   数回にわたるサミッ ト取材で、首相会見には 必ずと言って良いほど出 席したが、これほど明解 で要を得た、また迫力の ある冒頭スピーチをした 首相も皆無だった。その 場にいて、誇らしい思い をしたものであった。  この会見の質疑では、 北朝鮮問題も取り上げ られた。「交渉をどのよ うに進めるのか」という 問いに、「北朝鮮問題は 極めて熱心な議題になっ た。特に最終日の自由 討議では、北朝鮮への対 応が大きな焦点になった」 と、各首脳の関心の高さ を述べた上で、「私自身、 昨年9月 日、金正日 総書記と直に会談した が、日本、韓国、米国 の緊密な協力の上に(北 の)友好国である中国と ロシアの関わりも非常に 重要だと思う......一致し ているのは核問題につい ての脅威を完全に払拭し なければならないという こと......ここで聞いた各
ment Goals=持続的成 長目標の土台になった国
Transformationについて も、「我々は開発途上国
における効率性と透明性 を促進する電子政府モ
の対話、そして各首脳同
士の話し合いにおいても、
一時的な対立は永続する
ものではないことを強く
感じた。イラク問題も、
北朝鮮問題も、あるいは
世界経済、環境問題につ
いても、国際協調の重要
性の認識を共有すること
ができたと思う。シラク
大統領の名采配に改めて
全幅の敬意を表したい」
と極めて的確なまとめを
述べたうえで、「私にとっ
てこれが3回目のサミッ
トになるが、極めて打ち
解けた雰囲気の中で率直
かつ有意義な会議が行わ
れたと思っている......環
境問題では、私から京
都議定書(筆者注:先
進国の温室効果ガスの排
出基準について法的拘束
力のある目標数値を定め
た文書で、 年に京都で
開かれた気候変動問題
に関する 3で採
択された)の早期発効の
重要性を強調した。日
本政府は経済開発と環
境保護を両立させようと
懸命に取組んでいる......
また、日本の経済再生、
特に構造改革については 国首脳の意見を参考に、 各国からも関心が寄せら 日本は粘り強く平和的 れたが、世界各国が日 解決を求めて努力してい 本の経済成長を望んでお きたい」――往々にして り、今後も改革を進めて、 素っ気ない答弁の多い日 日本の経済発展が世界の 本の首相の中で、これは
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