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  Installation view of Kikuo Saito’s Theater Paintings. (All images: Courtesy of KinoSaito. Photo by Jody Kivort)
A view of The Theater
Alexandra Rojas, a residency artist, working in her studio.
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「KinoSaito」正面
 115 7th St., Verplanck, NY ■入場無料
■ www.kinosaito.org
Photo by Manami Fujimori
Painting as Performance/Performance as Painting Kikuo Saito: Cloud Paintings
■ 11 月 14 日(日)まで ■会場:KinoSaito
   古い校舎を改装
作家の遺志を継いだ人々の夢
 新アートセンター「キノサイトウ」
                                                                                                           マンハッタンから いう2フロアの建物 とでもいおうか。  そして、この春、 北へ車で1時間余 を改装したスペース  私は実は、生前 ローワーイーストサ
た魚のように、この ァ・メイアーとの共 うか。彼を慕う若
り、ハドソン川沿い が、まずは素晴らし の斎藤に一度だけ会 の町に新しいアート い。天井高のギャラ っていた。もう 数
イドの注目画廊か ら案内が届いた。 キクオ・サイトウの 個展開催の告知であ る。ここ数年、ニュ ーヨークの画廊では、 長年この地を拠点に 制作する日本人作家 の紹介が相次いでい る。 そ の 度 に、 こ れほどの作家がいた のかと驚かされる思 いだったが、言葉や 記号、モチーフが飛 び交う斎藤の抽象 画もまた圧巻だった。 思いがけずの大作で ラフな筆触ながら、 画面にはどこか抒情 的な要素もある。  こうして、作家 がすでに他界した後 で、改めてその存在 に瞠目することにな
場所が自分の世界だ と言わんばかりだ。 画面はどれも堂々と、 美しく、柔和な光を 浴びている。  思えば、画家に とって一番の幸せと は何だろう。制作 場を確保すること、 作品を保管できるだ けの十分なスペース を維持すること、そ して何より理想的 な環境で自分の作 品を永遠に展示で きること。 だとす れば、この「キノサ イトウ」は、まさし く作家本人と、そ の遺志を継いだ人々 の夢の実現だ。  もとよりこのセン ターは、通常見られ るようなアーティス トの個人美術館では ない。オープン記念 の展示こそ、ギャラ リーは斎藤の絵画で 埋まり、2階のシア ターには、1996 年初演のダンス劇「ト イ・ガーデン」(妻で ダンサーだった故イヴ
作)の再演が登場す 手作家も多かったと るが、今後は、ギャ いう。
スペースがオープン した。抽象画家で、 舞台美術の仕事でも 活躍した日本人ア ーティスト、斎藤規 矩夫(さいとう・き くお、1932〜 2016)の遺志を 継ぐアートセンター、 その名も「キノサイ トウ」の完成である。  もと学校だったと
リーやパフォーマンス 年前、知人の演出 用シアター、滞在作 家の紹介で、ヴィレ 家のスタジオほか、 ッジのラ・ママ実験
ラリーの一室では新 進作家や滞在作家の 作品展が企画され、 シアターは、ジャン ルに捉われないアー トやパフォーマンスの 実験場となる。また、 100年続いたとい う校舎の名残りを生 かして、地域住民や 子供たちを招いての 絵画教室の計画もあ るという。  制作ばかりか、こ うした広いアート活 動に興味を示してい たという斎藤。そ のルーツはやはり、 1966年にニュー ヨークにやって来て 以来、カラーフィー ルド絵画の画家たち のスタジオで働いた り、ラ・ママの創設 者エレン・スチュワー トに見込まれて舞台 デザインの仕事に取 り組んだりと、多く の人々と繋がり合っ て生きてきたことに あるのではないだろ
 その意味で、90 0平方フィートの広 さにバスルーム・キッ チン完備、中2階に はベッドまである滞 在作家用のスタジオ は、まさに作家目線 でデザインされた羨 ましい環境だ。現在 は招待制だが、ゆく ゆくは公募で選ばれ た作家二人が、6週 間に渡って制作する。  ともあれ、新アー トセンター「キノサ イトウ」は、メトロ ノースのハドソン線 ピークズキル駅から タクシーで数分の距 離。近隣には、「デ ィア・ビーコン」やイ タリアのアルテポー ヴェラの展示で知ら れる美術館「マガズ ィーノ」があり、ア ート好き必見のエリ アとなりそうだ。
ありし日の教室その ままの部屋や小さな カフェもある。煉瓦 造りの頑丈な外観に 比して、内部は全体 に柔らかさ、優しさ が広がるエアリーな 空間だ。画家の存 在が感じられる空間
劇場でお目にかか
る機会があったのだ。 「規矩夫さんはすご いのよ。ラ・ママの 生き字引なんだか ら」とのことだった が、私はまだその 伝説の存在に気づい
ていなかった。
ったわけだが、新設 の「キノサイトウ」 の広々としたギャラ リーに並ぶ一連の「シ アター絵画」と「雲 の絵画」。その絵肌 はいよいよ息づいて いる。まさに水を得
(藤森愛実)





































































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