Advertisement
2025年4月25日号掲載|10
夢と郷愁が交差した舞台
「田園ユニバースNY公演」
アッパーウエストに響いた昭和の鼓動
「田園ユニバースNY」が4月13日、アッパーウエストサイドのシンフォニースペースで上演。多くの観客に感動を与えた。プロデューサーでダンサーの西郷輝美が企画・演出を手がけたオリジナル作品だ。
昭和・平成の懐かしいヒット曲で構成された歌謡劇「田園ユニバース」は、2021年の初演以来、幅広い世代から支持を集めてきた。2023年12月には大阪と東京で再演。昭和歌謡と人情物語を融合させたこのオリジナル作品は、いずれも満席となる盛況ぶりを見せた。

今回上演された「田園ユニバースNY」は、大阪・関西万博を記念して企画されたもので、異文化交流の深化を目的としている。ニューヨークのパフォーマーたちとともに新たに再構成され、演出をエディ大野トール、脚本を川島雅美、歌唱指導を吉岡ちょこが担当。本公演が、同作初の海外公演となった。
物語のはじまりは、大阪の老舗キャバレー「田園ユニバース」。閉店を明日に控えた舞台で、かつてのスターたちが最後のステージに立ち、昭和の名曲を熱唱する。場内が一気に熱気に包まれた瞬間だった。
キャバレーの看板女優だったたまき(漣レイラ)はその夜をきっかけに、再び夢を追ってニューヨークへと渡る。
そして舞台はニューヨークへ。現地で日本人パフォーマーたちの拠り所となっているキャバレー「マンハッタン・キス」へと移る。しかし、そこもまた閉店の危機を迎えていた。たまきは、第二の故郷とも言えるこの場所で、自分の原点と向き合いながら、新たな希望を見出そうと奮闘する。
Advertisement
出演は、「昭和歌謡ショー」のパイオニアであるトシ・カプチーノ、俳優・松坂龍馬、ニューヨークを拠点に活躍するダンサーやシンガーたち。加えて、自身もダンサーでありダンス・インストラクター、「CUPA」の理事でもある平川美代子が、「田園ユニバース」の経営者・ミツヨ役を好演。存在感ある演技とダンスで舞台を鮮やかに彩った。
「田園ユニバースNY」は、ただの歌謡ショーにとどまらない。人と人との絆、時代の移ろい、遠く離れた地で夢を追い続ける日本人の姿など、異国で暮らす我々にとって、郷愁や共感を呼び起こす場面も多く、観客の心に深く響いた。会場を包みこんだ共感がそれぞれの胸に残り、明日への活力になったことだろう。