よみタイム|2024年9月20日号・Vol.478デジタル版 & バックナンバーはこちら

アメリカ発の酒蔵「獺祭ブルー」高品質のSAKEを追求

師を超え、高みを目指す
アメリカ発の酒蔵「獺祭ブルー」
高品質のSAKEを追求

アメリカで、特に若い世代に人気だという日本酒。大自然に囲まれたハドソンバレーのハイド・パークに、日本酒ブランド「獺祭」(旭酒造・山口県岩国市)から派生した「Dassai Blue(獺祭ブルー)」(桜井博志会長)の酒蔵=写真①=がある。

獺祭ブルー酒蔵外観
①大自然に囲まれたハドソンバレーのハイド・パークにある「獺祭ブルー」の酒蔵(All photos by KC of Yomitime)

「獺祭ブルー」は、アメリカ発のオリジナル・ブランドで、2023年9月に開業。ブランド名の「ブルー」は、中国の思想家・荀子による「青は藍より出でて藍より青し」に由来。「師を超え、更なる高みを目指す」という志しの下、ハイ・クオリティのSAKEを製造・販売している(正確には、日本国外で醸造した酒を「日本酒」と呼ばないことから、ここではSAKEと明記する)。

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そんな「獺祭ブルー」が、寿司と一緒にテイスティングできると知り、取材を決行。とはいえ、よみタイム担当者は下戸のため、旅行代理店「キュー・トラベル(CUE)」から4人(勝海良廣氏、杉澤一彦氏、宮本恵司氏、田中美香氏)に参加してもらった。

マンハッタンから車で約2時間、午後1時半に到着した時点で、すでに大勢が来場。カップル、友人グループ、中には子連れの家族もいて、予想以上に賑わっていた。

「獺祭」の挑戦  山奥から世界へ
②漫画家・弘兼憲史氏による漫画=「獺祭」の挑戦 山奥から世界へ=の英訳版を展示

早速、酒蔵ツアーに参加(テイスティング込みで1人50ドル、追加10ドルで寿司付き)。20分程度のツアーで、まずは、漫画「島耕作」の作家、弘兼憲史氏による漫画「『獺祭』の挑戦 山奥から世界へ」の英語版を展示・紹介したエリア=写真②=で、日本酒についての基本情報を学ぶ。

ちなみに、弘兼氏も山口県出身で、西日本豪雨により被害を受けた旭酒造をサポート。旭酒造は、島耕作ラベルの限定版「獺祭 島耕作」を発売(2018年)し、売り上げの一部を義援金として寄付している。

島耕作と桜井博志
漫画家・弘兼憲史氏が描いた獺祭・桜井博志会長(左)と、島耕作のパネル

酒造りの基本を学んだ後は、実際の工程現場を順を追って見学。解説は英語だが、時々「TEMA(手間)」という日本語を交えて説明するガイド。なるほど「手間」にピッタリの英語が無いのかもしれないと、改めて日本人の丁寧さに感服した。

獺祭ブルーは3種類、すべて純米大吟醸のみ

ツアー後は、いよいよお楽しみの試飲会。現在発売されている3種類の獺祭ブルー、「タイプ50(Type 50)」「タイプ35(Type 35)」「タイプ23(Type 23)」=写真③=を飲み比べるもので、今回は特別に同社の霜鳥健三社長に同席して頂き、その違いを伺った。

獺祭ブルーのテイスティング
③獺祭ブルー3種のテイスティング。寿司(要追加料金)はマンハッタンから寿司職人を呼び寄せている

「タイプの違いは、精米歩合の差です。玄米を100%とし、そこから磨いて50%残った米、35%残った米、23%残った米=写真④=から、それぞれが造られています。低い精米歩合の酒は、控えめで米本来の味に近く、より磨かれた酒は華やかでフルーティな香りが強くなります」

獺祭ブルーはすべて純米大吟醸。最低でも米の半分を磨くという「手間」がかけられている。

「今年初めて発売したのが『タイプ35』。兵庫県の県産米・山田錦を、アーカンソーの農場で育成・収穫して造った、アメリカ産山田錦のSAKEです。完成までに5年かかりました、とても美味しいですよ」と胸を張る。

精米歩合の違い
④精米歩合の違いを視覚的に解説した米のサンプル

アメリカに輸入される清酒は、日本出荷から店舗販売まで約3ヵ月程かかり、鮮度を保つためマイナス5度のコンテナで運ばれる。一方、「獺祭ブルー」は、ハイド・パークで生産・出荷。そのため、生酒も飲めるというから驚きだ(取材時の9月1日、水のパイプライン修理のため生酒は一時製造中止)。

「機械化が進んだ現在でも、やはり『職人の経験』には敵いません。香りはどうか、酵母は育っているかなど、人間の感覚がとても重要。当蔵での職人は4人の日本人以外すべて現地採用ですが、皆、酒に興味と情熱を持ち、一所懸命に取り組んでいます」

日本の米をアメリカの農家が栽培し、現地スタッフがSAKEを造る。日本の伝統と技術を惜しみなく海外で披露し、伝える。これこそが究極のコラボであり、真の文化交流ではないだろうか。

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「一般的な日本酒のアルコール度数は15〜16度ですが、獺祭ブルーはそれより2度低い14度。アメリカで『食中酒はワイン』が主流であることから、食事にマッチしやすいように工夫しました」

技術や伝統を「押し売り」するのではなく、「飲んでいただきたい」という、あくまでも「消費者、ユーザー」を優先した上で、自己に更なる磨きをかけている。

また、酒を造る工程でできる副産物「酒粕」と「米ぬか」。もったいない精神を持った日本人は、アメリカでもそれをフル活用する。

ダッサイ・ブルー・ミルクレープ
⑤酒粕が入ったレディMの「ダッサイ・ブルー・ミルクレープ」

「ケーキブティック『レディM』とコラボして、酒粕と獺祭ブルーを入れた『ダッサイ・ブルー・ミルクレープ』=写真⑤=を造りました。10月からは、チョコレート専門店『マリベル』で、酒粕チョコも発売されます」

ケーキは、マンハッタンまで戻らなくても同蔵で食べられるので、ぜひ試して欲しい(別料金)。米ぬかは現在、ウォッカに活用するため試行錯誤中だそうだ。

その他、酒粕を利用した「フェイシャル・マスク」「石鹸」「キャンドル」なども販売。獺祭ブルー含め、インターネットでも購入可能。

「将来的には、海外での販売数が日本国内よりも多くなるよう、日本の『獺祭』を超えたいと思っています」と、その志しは「ブルー」そのままだった。

霜鳥健三社長
今回、特別に案内していただいた霜鳥健三社長

ミサトも「獺祭」を飲んでいた!

最後に、参加者たちの感想をご紹介。

■勝海氏:料理にあわせて飲むワインが好きなので、普段はあまり日本酒を飲まないんです。でも今日、獺祭ブルーを飲んで見方が変わりました。最初はワインっぽい『タイプ23』が好きだと思いましたが、ずっと飲んでいられるのは『タイプ35』かな。いずれにしても、どんな料理にも合いそうだし、料理なしでも飲めますね(笑)。

■杉澤氏:酒好きな人には『タイプ35』がおすすめ。口に含んだ瞬間に、ほのかな炭酸ガスの余韻を感じます。酒の香りを残しながらも飲みやすく、ドライ。1本飲むならコレかな(笑)。女性なら軽くてフルーティな『タイプ23』が良いかもしれません。『タイプ50』は米の旨味が感じられますし、基本的には、人それぞれの好みになりますネ。

■田中氏:私はあまり飲めない方ですが、飲み比べてみるとその違いがわかりました。それ以上に、造る「手間」や工程など、知らないことばかり。日本酒はやっぱり奥が深いですね。

●霧鳥社長:食事中、どのワインが合うだろう?赤?白? と悩んでいる方には、迷わず「獺祭ブルー」をおすすめします(笑)。

その他、宮本氏はドライバーなので禁酒、下戸のよみタイムは役に立たず…。ただ、飲めないスタッフを狂喜させたのは、獺祭ブルーを手にした「エヴァンゲリオン」の初号機が入り口横に立っていたことだ。脇には映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」のワンシーンが展示、座るミサトの背後に大量の獺祭ボトルが並んでいる。ミサトが獺祭を愛飲していたとは知らなかった。

帰路の車中、下戸たちのグラスを担当した勝海氏は気持ちよさそうに爆睡。寿司も酒粕入りミルクレープも美味しく、皆が大満足。出かける際には、くれぐれも運転手は禁酒で。飲みたい場合は「キュー・トラベル」(連絡先下記)へ、カスタム・ツアーをご相談ください!

エヴァンゲリオン
「獺祭ブルー」を持つ初号機と、映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」のワンシーン。ミサトの背後に「獺祭」のボトルが見える

Dassai Blue Sake Brewery
■住所:5 St Andrews Rd., Hyde Park, NY
https://dassai.com

★カスタム・ツアー手配:キュー・トラベル(CUEINTL NY INC.)
■Tel: 212-869-0050
■E-mail :sales@cueintl.com
■インスタ :https://www.instagram.com/cuetravelny

獺祭ブルー酒蔵外観

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