2018年5月11日号 Vol.325
ニューヨーク留学体験記

「評価学」とSDGs

立食パーティーに参加した時のこと。「お仕事は何をされているんですか?」。振り向くと「ルパン三世」の峰不二子のような美女が、目の前に立っている。不意を突かれた僕は「え、えーっと、大学院生です」。「すごーい、どんなことを勉強しているんですか?」。「評価学で、SDGs(Sustainable Development Goals)と呼ばれる国連が定めた目標をテーマに研究しています。貧困を無くそうとか、気候変動対策に取り組むとか、全部で17個の目標が定められているんですが、開発途上国に限らず、全ての国で解決に向けて取り組んでいこうと合意された、持続可能な世界を目指す仕組みです。これには僕たちも貢献することができて、例えば…」と、言いかけたところで、不二子は、「そうなんですかぁ、あ、私ちょっと新しいお酒もらって来ますね。すぐ戻りますぅ」と、風のように僕の目の前から姿を消し、二度と戻ってくることはなかった。あれだ、つまらない男の前から立ち去る時に女子が使うテクニックを見事に使われたのだ。「いやあああああ」。僕は虚無感に襲われながら、目の前のカシューナッツを手当たり次第に口に放り込むのだった。
…と、ここまでは全て妄想である。そう、僕はこの原稿の半分を妄想に費やしたのである。実は、自分の研究をこの場で伝えようと文字にしてみたが、ビックリするほどつまらなかった。まるでテストで解けない問題を必死に解いているような心境だが、「ついにこの時が来たか」とつぶやきながら、僕はこの問題に向き合うことにする。

日本でほとんど知られていない評価学を学ぶため、僕は、評価学の本場と形容されるアメリカにやって来た。ニューヨークに本部を置く国連では、データや根拠に基づいてプロジェクトが計画・実行されている。実施するプロジェクトの効果を測ることで=@投入した資源に見合う成果があったのかなどを、資金を拠出している加盟国に説明する Aプロジェクト自体を評価結果や統計データに基づいて改善する=といった利点がある。こうした一連の動きを支えているのが、評価学や統計に関する専門知識と文化である。
僕は、自分の専門分野である評価学の知識や経験を活かし、国連で働くことを目標としている。一方で、ニューヨークで獲得した最新の評価学やSDGsに関する知見を日本に持ち帰り、各自治体で活用するために一役買いたいと考えている。
評価学の数あるテーマの中で、僕が力を入れて研究しているのは、国連が推進するSDGsである。次回は、このSDGsがニューヨークで暮らす皆さんの生活にどのような関係があるかといった点も含めて、引き続き、僕のニューヨーク留学における体験談をお届けしたい。(燒リ超)


国連内にあるお土産屋もSDGs一色


SDGsのポスター(All photos by Kosumo Takagi)



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