多様なアイデンティティが集結
見どころ・特別展など
1823年8月、ブルックリンに初めて設立された貸出無料の公共図書館「ブルックリン・アプレンティス図書館(Brooklyn Apprentices’ Library)」が、「ブルックリン美術館(Brooklyn Museum)」の始まりだ。2024年、創設200周年を迎えたブルックリン美術館では現在、さまざまなイベントが行われている。ここでは、ブルックリン美術館の見どころと、特別展から抜粋して紹介したい。
市内で2番目に古く大きい美術館
NY市内で最も古い美術館は1804年創設の「ニューヨーク歴史協会(New York Historical Society Museum and Library)」で、最も大きいのは「メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)」だ。
現在のブルックリン美術館は1897年に建てられたもので、改修と拡張を繰り返し、進化。所蔵コレクションは約50万点で、メトロポリタン美術館に次いで市内2番目に多い。アジア、アフリカ、オセアニア美術を常設し、民俗学的な資料としてではなく、「芸術品」として紹介。古代エジプト美術品は、世界でも有数のコレクションとして知られ、多数の浮世絵も収蔵。歌川広重が手がけた版画「名所江戸百景」全118点は、同館が世界に誇る「宝」のひとつだ。
200周年を期に美術館ロゴを刷新!
2つのドットと重なり合う文字のロゴに=写真①=、万華鏡のような色彩で展開する美術館グッズは、多様なアイデア、アイデンティティが集まる場所としてのブルックリン美術館を表現している。
展示(1):ブルックリン・アーティスト展
過去5年間、ブルックリンに居住またはスタジオを構えて活動したアーティストを紹介。200人を超える作家が集結したグループ展で、絵画、彫刻、ビデオ、インスタレーションなど、その創造性と多様性を強調する。画家・中尾真弓の作品=写真②=も展示されている。
展示(2):アメリカン・アート、喜びに向かって:アメリカ芸術の新たな枠組み
5階「アメリカン・アート・ギャラリー」での展示が200周年記念により再構成。8つのセクションに大別され、黒人フェミニストと有色人種の視点を強調する。歴史的に阻害されてきたコミュニティ(女性、有色人種、貧困層など)が果たした貢献などにフォーカス。400点を超える展示の内120点が倉庫から初めて出された作品で、当時は「アート」としてみなされなかったアメリカ芸術の美しさと複雑さを紹介。同時に、アート界において排他的でヨーロッパ中心主義、アーティストとは白人男性である、という歴史を批判する。
日系アメリカ人アーティストの日比久子は、アジア系アメリカ人女性として初めて同館に収蔵された=写真③=。
キルトで作るいきいきとしたポートレートで知られるビザ・バトラーは、アフリカ系アメリカ人のテキスタイル・アーティスト。本紙2025年1月10日号表紙画像=写真④=は、黒人女性として初めて米連邦議会下院議員を務めたシャーリー・チザム。
展示(3):ソリッド・ゴールド
名誉、喜び、儀式、精神性、成功、富を象徴する「金」は、多くの芸術やファッション、映画、音楽、デザインにインスピレーションを与え続けてきた。13・14世紀の豪華なイタリアの祭壇画、精巧な日本美術、オートクチュールや現代アートまで、世界の文化と遺産に影響を与えた「金」を紹介=写真⑤=。
展示(4):型破りな挑戦
長年愛されてきた作品と最新の傑作を3つの章で再構成。絵画、写真、ビデオ、彫刻、陶芸などの現代アートを中心に展示。17 世紀から今日までブルックリンで生み出された作品へのオマージュ。
■会場:Brooklyn Museum
200 Eastern Parkway,Brooklyn
■一般(General Admission):大人$20、学生/シニア$14、4〜19歳無料
■特別展(Ticketed Exhibition):大人$25、学生/13〜19歳/シニア$17、4〜12歳$10
■www.brooklynmuseum.org
①The Brooklyn Artists Exhibition
■1月26日(日)まで
■展示:Great Hall(1階)
②American Art, Toward Joy: New Frameworks for American Art
■開催中
■展示:American Art Galleries(5階)
③Solid Gold
■7月6日(日)まで
■展示:Morris A. and Meyer Schapiro Wing and Iris and B. Gerald Cantor Gallery(5階)
④Breaking the Mold: Brooklyn Museum at 200
■2月26日(水)〜2026年2月22日(木)
■展示:Decorative Arts and Design Galleries(4階)