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2025年5月9日号掲載|4
バンクシー作品・期間限定で展示
競売入札価格50万ドルから
「傷ついた心との闘い」
イギリスを拠点に活動する正体不明のストリートアーティスト、バンクシーの作品「Battle to Survive a Broken Heart(傷ついた心との闘い)」=写真①=が、ブルックフィールド・プレイスのウィンターガーデンで4月22日(火)から5月21日(水)まで公開されている。
本作は21日、ニューヨークの老舗オークションハウス「ガーンジーズ(Guernsey’s)」により競売にかけられる。開始入札価格は50万ドルに設定。収益の一部はアメリカ心臓協会(American Heart Association)に寄付される予定だ。

この作品は、2013年秋、ブルックリンの倉庫外壁に突如として現れたもの。制作のきっかけは、当時、倉庫を所有していたヴァシリオス・ジョルジアディス氏とバンクシーとの偶然の出会いに端を発すると言われている。
ある日、倉庫近くでバンを運転していたバンクシーが道に迷った際、通りかかったジョルジアディス氏に助けられた(とされている)。翌日の深夜、正体を明かさぬまま戻ったバンクシーは、その壁面に一つの風景――絆創膏で補修された赤いハート型のバルーン(浮遊しつつも、どこか脆さと痛みを宿したイメージ)――を描いた。
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ところが、制作後すぐに、別のグラフィティアーティスト「オマー(Omar NYC)」が観衆の前で、作品中央に自身の名をスプレーで描き込み、これを「改変」。それに対し、異例の対応を取ったバンクシーは、再び現場に戻り、自ら手を加えて作品を再構築した。
バンクシーが自作に再加工を施した唯一の例として知られる本作は、「破壊と修復」、「匿名性と署名性」、「対立と受容」といった、ストリートアートの本質的な緊張関係を一層際立たせたと評価。バンクシーはオマーの行為に腹を立てた訳ではなく、彼のイタズラに対し、あえてアートとして「返答」した可能性が高く、「対話を試みる形で反応した」と解釈されている。

ジョルジアディス氏はその後、バンクシーの作品を守るために壁面を切り出して保管。2014年からロングアイランドシティの倉庫で管理していた。
2021年1月、ジョルジアディス氏は心臓病で死去。今年、家族は彼を称え、保管していた本作をオークションにかけることを決定。収益の一部をアメリカ心臓協会(American Heart Association)に寄付すると発表している。
バンクシーとジョルジアディス氏の出会いは、新たな意味合いを持つ形で公益に貢献することになった。
多彩なパブリックアートが楽しめる
ブルックフィールド・プレイス
ブルックフィールド・プレイスでは、他にもアート作品が展示中。斬新な作品が無料で鑑賞できる穴場スポットだ。
ミシェル・フーフヴェルトのハート型彫刻「ハート(Heart: Portals of Connection)」=写真②=は「つながり」を象徴。色彩豊かな作品で愛や共感、癒しを映し出す「感情のポータル」だ。
オーロラ・ロブソンの「プラシア(-plasia)」=写真③=は廃プラスチックから生まれたアート。環境意識と再生の可能性をテーマに、有機的な造形で、新たな命を吹き込む。
ルーベン・ウーの「エアログリフス(Aeroglyphs)」は、ドローンで、風景を再構築させた写真展。地形を照らす「ルクス・ノクティス(Lux Noctis)」=ラテン語で「夜の光」=、幾何学模様の「エアログリフス」、自然と調和する最新作「サイレン(Siren)」など、光と技術で「見る」を問い直す作品群。


Banksy: Battle to Survive a Broken Heart
■5月21日(水)まで
■観覧無料
★オークションと作品詳細
https://www.liveauctioneers.com/item/204433044
■会場:@Winter Garden / Brookfield Place
230 Vesey Street
■https://bfplny.com
-plasia by Aurora Robson
■5月12日(月)まで @Winter Garden Gallery
Aeroglyphs by Reuben Wu
■5月13日(火)〜8月25日(月)@Winter Garden Gallery
Heart: Portals of Connection
■11月10日(月)まで @200 Liberty Street