2017年12月22日号 Vol.316

タイムズスクエアで海底探検

バーチャル水族館みたいな展示がタイムズスクエアにオープンしたらしいから行ってみようと、よみタイム正月号恒例の突撃隊が出動した。正直言うと、根本的な勘違いがあったものの、楽しめたという点で結果オーライ。何を勘違いしたって、私らはてっきり館内が博物館仕様で、ガラス越しの展示の代わりにバーチャルリアリティー画像で魚を観察するんだと思い込んでいたのだ。ところが行った先はナンと、海の底だった…。実物大の巨大なザトウクジラやお化けイカに追いかけられるかと思えば、海藻の迷路で迷子になったり、アシカを調教したり。そういえばシャチ(だったと思う…)に食われそうにもなった。とにかく、しばしそこがタイムズスクエアのど真ん中だってことを忘れさせてくれる。命の洗濯にぜひどうぞ。ちなみにこの海底アドベンチャー、日本語対応だ。アナウンスは英語だが、映し出される映像説明には、日本語も含まれている。(ささききん)


Photos © National Geographic Encounter


いざ、バーチャル海底探検
アドベンチャーに出発!


この海底アドベンチャーの売り文句は、「これはバーチャルリアリティーではありません。新しいタイプのエンターテインメントです」。素人的には、バーチャルリアリティーじゃなきゃナンなんだよって思うのだが。要は21世紀フォックスとその傘下のナショナルジオグラフィックがタイアップし、最新のハイテクビジュアルエフェクトでもって、大人もびっくりの海底探検アトラクションを創り出したってことだ。

やたら愛想のいい若者に導かれ、最初に入った空間で「ウエルカム」のアナウンスを聞き、「ようこそ」の日本語映像を見て、「さあ始まるぞ」感満点。
続いての冒険空間に足を踏み入れると、そこはすでに海底ウン十メートル(っぽく作った部屋)だった。壁から天井から床から全部海の底の映像で覆われている。足元を小魚やエイが泳ぐ。サメまで近づいてくるから、つい逃げたくなって足を動かすと、それに反応して床の上に移った水がゆらゆら揺れる。勝手に海底が動くのだ!
「すごい!」と思うと同時に、一気に頭がクラクラしてきた。3Dでもナンでもないのだが、四方八方が海で、全てが生きているかのように蠢(うごめ)くから、三半規管がおかしくなるのだ。
面白いことに、周りのアメリカ人(多分)はみんな平気な顔をしてバーチャル海底に突っ立っていた。小さい子供なんかきゃっきゃと喜んでいる。ナンで私らだけクラクラきて、壁にしがみついてるんだか。でも悪くないイントロだ。未知の海底探検なんだから、このくらいやってもらわなきゃ困る。

次の部屋は深海のサンゴ礁…だったと思う。いろんなプランクトンみたいな映像が出てきて、深海の不思議な生命について説明されたが、内容は全然理解できなかった…。
「さあ、もっと深海へ」と、案内のお姉さんの後についていくと、何十メートルもあるような大きなワカメがユーラユラした部屋へ。実際海底にはこういうお化けワカメの種類があって、1日何メートルもの勢いで成長するんだとか。海底なのに変な話だが、「これ、高所恐怖症の人はヤバイんじゃない?」みたいなワカメ空間もある。
巨大なイカの生態を紹介する海底(部屋)では、暗い海の底で日々繰り広げられているだろう、イカ同士の闘い(?)を、「ふーん」と思いながら見学。この辺に来ると、なんとなく海底空間にも慣れてきた。


足下にまで泳いでくる魚には驚いた!


暗闇に光るサンゴや微生物の部屋。スクリーンに手をかざすとその動きにあわせて微生物が発光する


おばけワカメの部屋は、ちょっとした迷路に

クライマックスは4D!

いよいよアドベンチャーも終わりに近づくと、「イヨッ、待ってました!」3Dメガネ。やっぱ最後はこれがないとねえ、と突撃隊(といっても今回は二人なのだが)はワクワクドキドキ。
いや、実際これは期待を裏切らなかった。縦型ドームのような空間で立ったまま見る3D、いや音もあるから4D映像は、本当に自分が海底に潜っているかのよう。
恥ずかしながらはっきり思い出せないのだが、音というのは効果音もあるが、海底の「自然音」…っぽい。説明のためのアナウンスがあったかどうかも覚えていない。そんなことより、何千何万といそうな魚の群れに突っ込んでいく実物大の巨大なクジラや、恐ろしい顔のカジキもいただろうか、そういうのを眺めているだけで圧倒されるのだ。
イントロの部屋と同じように「海が動く」が、もう三半規管も大丈夫。クラクラすることもない。そして最後は、その場にいる全員で「ギャ=====!」と絶叫。あー、びっくりした。


3Dメガネで見る海中の様子は迫力満点!


海の生物や環境について学ぶ「エデュケーション・ルーム」


「エデュケーション・ルーム」では日本語の解説もありスクリーンの日本国旗をタッチすれば日本語表示に切り替わる

海の環境保護も学ぶ

基本、観光客を対象にしたこういう展示にお決まりの、「写真はいかが」セクションをスルーして、広い部屋に出るとそこは「エデュケーションルーム」だった。いろいろな海底の生き物を、スクリーンにタッチして選び、それらがどこに住んで、どんな大きさで、何を食べて、天敵はなに、みたいなことを学ぶセクションが一つ。
面白かったのは、環境クイズセクション。「あなたの街の海岸と海を守るプロジェクト」と題し、タッチスクリーンで様々な質問が出され、それに答えていく。どんどん進み、正解ならどんどん海が奇麗になっていく。間違うとどんどん汚くなっていく。
例えば、オイルタンクから海にオイルが漏れた場合、どうやってオイルを取り除きますか? という質問。答えは選択式。「すくい取る」「火を放って燃やす」「洗剤を利用して化学処理する」など。正解は一つではなく、それぞれに解説付きなので、「へえ」と学ぶこと多し。このクイズセクション、バカにできない。結構難しいのだ。

いかが? 「本当の海」に潜ると、そのあまりの壮大さと神秘性に、「人生観が変わる」とよく言われる。このバーチャル海底探検、はっきり言ってそこまでじゃない。でも楽しい疑似体験ではある。ついでに言うなら、もう少しチケットが安くてもいい気はする。

National Geographic Encounter: Ocean Odyssey
■会場:226 W. 44th St.
 (bet. 7th & 8th Aves.)
■TEL: 646-308-1337
■一般$39.50、65歳以上$36.50
 12歳以下$32.50
 10人以上の団体15%オフ
natgeoencounter.com



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