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Vol.220:2013年12月20日号
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よみタイムVol.220 2013年12月20日発行 年末年始特大号

殺しと飽食のススメ

マーダーミステリー・エンターテインメントなるものをご存じだろうか。スタイルはいろいろある。レストランでの食事中に殺人事件が起き(もちろん芝居)、さあ犯人は誰だ!という、客と役者が入り交じって犯人当てをするディナーショーから、美術館で起こった殺人事件を推理するフィールドトリップ風のものまで、バラエティーに富んでいる。本紙正月号で取り上げるぞと、ウエブサイトで見繕って突撃取材と相成ったのだが、ぶっちゃけた話、大当たりが一つと、大外れが一つ…。 (ささききん)


Matthew Oaks(中央の役者)。背後から鑑賞するのは仮面の観客。(C)Yaniv Schulman

大当たり!危険な香り「スリープ・ノー・モア」
キューブリック「アイズ・ワイド・シャット」を彷彿
客は全員白い仮面をかぶり、無言必須…

チェルシーの倉庫ビル
流血、争い、全裸シーン


マクベス役のNicholas Bruder とレディー・マクベス役の Sophie Bortolussi 。背後の仮面は観客。 (C)Yaniv Schulman

(C)Robin Roemer

(C)Yaniv Schulman

結果から言うと、大当たりがイギリスのシアターカンパニー「パンチドランク」による「スリープ・ノー・モア」で、大外れが「マーダーミステリー・カンパニー」の「マーダー@マスカレード」だった。ブロードウエーのヒットショーと学芸会以上の格差がある。どうせならいい方を紹介すべきなので、ここでは「スリープ・ノー・モア」にフォーカスしたい。もちろん、大外れの大根マーダーミステリーも記事の後半でオマケ解説させていただくが。

 西27丁目、チェルシーのギャラリー街の一角。「McKittrick Hotel」と名付けられた、3つの倉庫を改造した6階建てのビルがある。ここで毎夜、「スリープ・ノー・モア」が展開される。2011年にオープンして以来、密かに大ヒットしているショーだ。
 「マクベス」をモチーフにしてはいるが、「マクベス」そのものはかけらもないので、それは期待しないように。ウィリアム・シェークスピアと、スタンレー・キューブリックと、アルフレッド・ヒッチコックと、デヴィッド・リンチが一緒に悪ふざけをして、ビルを改造したらこういう芸術空間が出来上がるのかもしれない。
 延べ10万平方フィートの床面積に、数えきれないほどの部屋が作られ、部屋ごとにさまざまな「シーン」が展開される。リアルなセットもすごいが、役者もおどろおどろしい。華やかな舞踏会場、陰気なバスルーム、死体が転がっていそうな樹海、そして怨霊が出そうな墓場…。そこで繰り広げられる流血シーンに全裸シーン…。時代設定は1930年代だと思われる。

キャラクターを追いかけ
階段を上り下り、部屋から部屋へ

 役者は25人ほど。客は、まず一人のキャラクターを選び、その人を追って階段を上がったり下りたりしながら、部屋から部屋へ移動し、そのキャラクターに起こる出来事や事件の目撃者となる。ショーの所要時間はざっと2、3時間か。途中で追いかけるキャラクターを変えてもいい。
 自分が追うキャラクターに一体何が起こっているのか、部屋のセットにある本や、手紙を読み、荷物をひっくり返して捜査(詮索)する客たち。同じ部屋でも時間によって起こる事件が違うので、裸のからみや流血が見たい人は4階に何度も行ってみようーーとはマル秘情報。
 とにかく一種異様だ。客は全員、白い仮面(ベネチアンマスク)をかぶらなければいけない。そして、会話は一切許されない。部屋ごとにいる役者も、ショーを通して一言も発しない。
 キューブリック監督の映画「アイズ・ワイド・シャット」に出てくる、怪しい秘密の集会所に、仮面で顔を隠し、暗黙のまま身を置いている自分を想像してしまう。他人を装って危険な遊びをしている気分。その場の不気味さを表現するなら、映画「シャイニング」(同じくキューブリック監督)のホテルにいるような気になるといえば分かりやすいか。
 脳のバランスを失ったようで、最初は途方に暮れるかもしれない。一緒に行った友達と話せるわけではないし、単独行動が基本のこのショーでは、いつのまにか友達ともはぐれて、自分一人になっている。

楽しいこと請け合い
自分を解放、空間に身を投じて

 そういう最初の戸惑いから自分を解放し、空間に溶け込んだ気になれればこっちのものだ。チョー楽しめること請け合い。一緒に行った友達とは、時間と待ち合わせる場所をあらかじめ決めておくといいだろう。たまに必死で2人組で行動しようとする奴らがいるが、邪魔でしようがない。以下は、ショーに赴くときのちょっとしたアドバイス。
@ストーリーや筋書きがあるわけではないので、それを期待していくと、頭を混乱させることになる。発想の転換とありのままを受け入れる心の準備を。
A平日は夜7〜8時、または7時半から8時半までの間に15分おきに客をセットに入場させるので、最も早い時間に行く方が混雑を避けられる。8時、8時半を過ぎると、その日の客が全員入った状態なので、どこに行っても混雑し、部屋によってはせっかくの事件を目撃できないことも。ショーを見る時間は2時間から2時間半をメドに。金曜、土曜は11時からの深夜ショーもある。
B「McKittrick Hotel」内にあるレストラン「The Heath」での、プリ・シアター・ディナー(3コース48ドル50セント+税+チップ)は6時から。食事代はショーのチケット(スタンダードで90ドル)には含まれない。別に予約を入れること。
Cショーのセットの中には、カバンや携帯電話を持って入れないので、コートチェックで預けることになる(4ドル)。財布まで預けたくない人は、はなから財布は持って行かず、クレジットカードと現金をポケットに入れるだけの身軽さで行くとよい。
D2、3時間立ちっぱなし、歩きっぱなしなので、歩きやすい靴を履いて行くこと。ドレスアップする必要はない。セットの中は暑くなるので、コートや上着をカバンと一緒に預け、薄着になることを勧める。
E終始仮面をかぶらなければならないので、眼鏡よりもコンタクトレンズの方がいいが、仮面は頭の後ろで調節できるので、眼鏡でもOK。セットの中は薄暗いし、役者が踊っているときに下手をすると蹴られることがあるので、薄暗い中で敏速に動き、役者の邪魔をしないよう、視力を確保するのは必須。

Sleep No More
■会場:530 W. 27th St (bet. 10th & 11th Aves.)
 TEL: 866-811-4111
sleepnomorenyc.com
■料金
●$90/スリープ・ノー・モアのみ(スタンダードチケット)
●$48.50/レストランThe Heathでのプレシアター・ディナー(3コース)
 ※飲み物、税、チップは含まれていない
●$150/Maximillian's List (VIPチケットのようなもの)


グルメレストラン「The Heath」
「スリープ・ノー・モア」プレフィックス

マーダーミステリー・ディナーショーといえば、料理には全然期待できないが、この「スリープ・ノー・モア」の施設の一部であるレストラン「The Heath」は、ハイエンド・グルメレストランだ(メニューはウエブサイトでチェックできる)。アラカルトのメニューも、「スリープ・ノー・モア」前のプレシアター用プレフィックス・ディナーも充実している。プレフィックスは、48ドル50セントと手頃そうだが、飲み物、税、チップは別なので、ワインを1、2杯飲めば一人100ドルコース。1930年代ヨーロッパの、列車のダイニングカーをデザインしたセクションでは、当時の列車で出されたメニューを再現するなど、手が込んでいる。シェフはかなりの時間を事前のリサーチに費やしたという。また、メインのアトラクションである『スリープ・ノー・モア』のショーの一部が、レストランにまでなだれ込んでくるので、レストランだけを試すのも一興かもしれない。このほか、施設内にはManderley Bar、Gallow Greenという2つのバーがある。住所は「スリープ・ノー・モア」と同じ。
■予約/問合せ:TEL212.564.1662
TheHeath@McKittrickHotel.com


大外れ!「マーダーミステリー・カンパニー」
これぞ大根マーダー劇

大外れのショーについてウダウダ書く気はない。そもそもマーダーミステリーとしての作品の出来(プロットとか演出とか)以前に、企画運営がアマチュアだっつの。8時から始まるから7時半に来いといいながら、狭い会場に客をぎゅうぎゅう詰めにするまで1時間半以上かけ、ショーが始まったのは9時過ぎ。延々と何も起こらないまま、客を1時間半も狭いテーブルに座らせるか。やっと始まったと思ったら、誰も死なないし。客たちは皆一様に混乱している様子だ。ついに誰かが死んだころには、もう腹が減りすぎて集中力ゼロ。男がシガーを吸って中毒死した設定だが、その死体が客の目の前でむっくり起きて楽屋に戻り、今度はカツラをかぶって刑事役で出てきたから、さあどっちらけ。同じころやっとメーンコースが配られたはいいが、事前予約させられたサーモンのフィレを全部焦がしたらしく、急遽焦げたシャケをパスタにまぶしたシャビーな料理が出てきた。そもそも会場はレストランでもイベントホールでもない、ジュイッシュのテンプルだった…。もじゃもじゃ頭の大根刑事があるかないか分からない舞台の上でがなり立てるのを尻目に、このままではまずいデザートが配られるのは11時になりそうだと判断し、途中でとんずらした。一人60ドルプラス15ドルのVIPチケットの価値は限りなくゼロに近かった。悪夢のような一夜だった。
www.grimprov.com 


【オマケ】
メトロポリタン美術館で「ダ・ビンチコード」!

メトロポリタン美術館でのマーダーミステリーもある。これはディナーなし。ダン・ブラウンの小説「ダ・ビンチコード」風の謎解きに挑戦する。殺された美術館のキュレーターは、事件を解くカギとなるたくさんの暗号を残していた。その暗号を解きながら美術館内を捜査していくうちに、美術館が購入したダ・ビンチの絵画をめぐる欲望と陰謀が見え隠れする…。大人向け。(これはよみタイム突撃取材班が体験したものではない。読者の幸運を祈る。)
■Watson Adventures
■TEL: 877-946-4868
www.watsonadventures.com