2016年9月2日号 Vol.285

「瞑想」よりも「交信」
中東の神秘に魅せられ
ダラブッカ奏者 ラキ


音楽は旅の案内人。音に魅せられアーティストは、音を紡ぎ伝え、世界を廻る。そこに生まれる新たなエネルギーが旋風となり地球を駆け抜けていく。

中東の打楽器ダラブッカ(Darbuka)を操るアメリカ生まれのラキ。彼女はカナダ、フランス、エジプトなど様々な国々を住み渡り、18年前にインドで打楽器を始め、イスラエルのテルアビブでダラブッカと出会った。
ダラブッカはドゥンベク(Dumbeck)という別名を持つゴブレットの形状をしたアラブの打楽器だ。ベリーダンスの伴奏楽器としては欠かせないもので、インドの太鼓タブラーにも似ている。
「中東の音楽やリズムが大好きなの。何故かダラブッカは私と相性が良かったのか、独学だったけど、演奏を始めて、わずか1年で、他の仕事が辞められるぐらい、プロのダラブッカ演奏家になれたわ」と語るラキ。
この楽器は、20年前にトルコで開発された新しいドラミング・スタイル、「ターキッシュ・スプリット・フィンガー・テクニック」を使う。10本全ての指を駆使し、様々なリズム・パターンを、目にも留まらぬスピードと難易度の高いテクニックで演奏する。
手にヘナアートを施し、横たえたダラブッカの打面を舞うかのようにビートを打ち出すラキ。目にも留まらぬ素早い指のムーブメントは、視覚的にもエキゾチックで、まるで指がダンスをしているかのよう。そんなラキは中東音楽のメッカで、ドラムの達人が群れを成すトルコのイスタンブールに6年前から住んでいる。そこでは街のストリートやレストランでダラブッカの演奏が楽しめるという。
中東音楽やダラブッカと聞いてもピンと来ないかもしれないが、実はコンテンポラリー音楽にもふんだんに使われている。
「スティングやマドンナのようなポップスターたちは、ダラブッカなど中東音楽のエレメントを巧みに取り入れて、世界の舞台で歌っているのよ」

ラキは、演奏活動以外にインストラクターとしても活躍中。世界を回るダラブッカ・キャンプでは、ドラミングはもちろんのこと、瞑想、運動、ヨガ、ビーガンまで、ライフ・スタイルが体験できると言う。受講する生徒たちは、年齢、性別問わず、教師、技術者、シェフ、ベリーダンサー、プロのドラマーまで、実にバラエティに富んだ人たちが世界中から集まってくる。次回のニューヨークのキャンプは2017年3月で、ダラブッカのファンが多い日本でも開催が決まっている。

作曲家でもあるラキは、ダラブッカだけではなく、幻想的なサウンドが特徴の12弦楽器カマンチェも演奏し、美しい旋律を生み出す。
「ペルシャの音楽家と演奏している時に、ギャラの代わりにカマンチェをもらったのが始めたきっかけよ。中東音楽は音階が独特で、ピアノには存在しない音がある。とても美しい楽器で、空想的で感情的、この音色を聴くと多くの人が涙するの」とその魅力を語る。

ラキが作った新しいグループが「ドゥーム(DÜM)」だ。トルコ、エジプト、イラン、インドのリズムにファンク、サンバ、ヒップホップのビートをミックスしたユニークなリズム・センセーションを繰り広げる。彼女がこれまで発表した9枚のソロアルバムから、中東音楽のメロディーとリズムをふんだんに取り入れたオリジナル曲を演奏し、魅惑のコスチューム、メイクアップ、振り付けなど、ビジュアル面でも観客を楽しませてくれるエンターテイメント・ショーを披露する。
「私たちのショーは、オーディエンスからのエネルギーを受け取り、手を叩いたりしてもらって演奏にも参加してもらったりもするの。メディテーション(瞑想)というよりは、コミュニケーション(交信)に近いものね」とライブの魅力を説明するラキ。
そのドゥームが9月7日、ニューヨーク公演を行う。コンサートでは、彼女とそのメンバーは息のあったダラブッカの演奏、そしてラキはカマンチェの演奏を披露し、中東のエキゾチックな香りが漂うオリジナル音楽を思う存分聴かせてくれる。

ニューヨークからイスンタブールへ。ラキが奏でるダラブッカとカマンチェが、貴方の旅先案内人になってくれる。アーティストは音を紡ぎ、人と世界をつなぐ。貴方の役目は音楽の扉を開けるだけ。(河野洋)

Raquy's Düm Concert
+ Kaeshi Chai (BellyQueen) NYC
■9月7日(水)8:30pm
■会場:Speyer Hall
 at University Settlement:184 Eldridge St.
 raquy@raquy.com
■一般$20、学生/シニア$12
www.brownpapertickets.com/event/2586187



河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。 ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
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