2016年8月19日号 Vol.284

全ては直感から始まった
生粋のストリートミュージシャン
シンガーソングライター タムロリエ


自分が本当に信じているものなら、妄想でさえ言葉にした時、説得力が生まれる。信念には偽りがないからだ。嘘のない歌詞と癒しのメロディで、様々な世界をリスナーに届けるシンガーソングライター、タムロリエ。全ては直感で始まった。

奈良県出身のタムロリエは、子供の頃から天理市の駅前で、いつも音楽を奏でるストリートミュージシャンたちを見て育った。
「私の家族は、どちらかと言うと体育会系で、音楽には全然興味がなかったんです」
そんなタムロが音楽に引き込まれたのは、中学1年の時、楽器屋でフォークギターを見た瞬間だった。
「これ、何か弾けそうな気がするな」
何の根拠もない閃きから、大きなステージで演奏している自分の姿が見えたと言うタムロは、フォークギターを買ってもらう。
タムロは弾き方すら知らないまま、買ったばかりのギターを抱えて、年上ばかりのストリートミュージシャンの群れに入っていった。「まずは形から」それが音楽を始めたきっかけだった。
そして、歌詞を覚えるのが苦手だったと言うタムロは、自分の言葉で詩を書き始める。歌詞を覚える必要がないから楽だったと言う。やがて簡単なギター・コードが押さえられるようになると、舞い降りて来る旋律と浮かび上がる言葉を紡ぎ、1年目で10曲以上ものオリジナル曲を書き、自主制作EPを制作。中学2年にしてシンガーソングライター「りえちょ」(当時のアーティスト名)が誕生した。
小さなストリートミュージシャンは、周りの大人たちに褒められ、ちやほやされ、すっかり有頂天になった。「私って天才じゃない?!って思ってました」と無邪気に笑うタムロ。
高校生になると音楽コンテストで次々と賞を受賞。ライブハウスにも出演するようになり、活動の場は、奈良から京都、大阪へと広がり、一気に噂のアーティストとなる。この頃のタムロは周りにも絶賛され、自信満々、世界の頂点に立った気になっていた。
そして東京で活動を始めたある日、女性シンガーソングライターばかりを集めたコンサートに出演が決まる。しかし、そのレベルの高さを目の当たりにしてタムロはすっかり自信を喪失してしまう。
「完全にぶちのめされました。東京には若くて可愛くて歌の上手い子がわんさかいたのです」そんな世界があることすら知らなかったタムロは、めげずにライブ活動を続け、年間200本近くをこなしたこともあった。
20歳を目前にしたタムロは、いつまでも子供のような「りえちょ」と言う芸名では続けられないだろうと、初のフルアルバム「アオニサイ」を発売し、奈良で行った10代最後のワンマンを境に、アーティスト名を「タムロリエ」に改名する。
20歳になって少し大人になったシンガーソングライターは、子供扱いされない現状を認識し、今までの若い自分を超えなければ、もっと良い曲を書かなければ、という半ば脅迫観念に近いプレッシャーから、逃亡するかのようにアメリカに目を向けた。21歳の時だった。
「アメリカと言えば自由の女神のニューヨークでした」
迷いもなくアメリカ大陸に上陸したタムロは1ヵ月滞在。一旦は帰国するが、日本には自分の居場所がないと、直ぐに拠点をニューヨークに移した。
生粋のストリート・ミュージシャンは、マンハッタンでも街路にステージを見つけ、最近もセントラルパークで毎週歌っているが、9月からはハーレムの音楽クラブ「Silvana」で、早くもレギュラー出演が決まり、「もっと歌える舞台を増やしていきたい」と意欲を見せる。

「嘘のない歌詞を書いています」とタムロリエ。ギターを爪弾きながら今日も誰かの為に歌い、癒しを与える。23歳にして波乱万丈。中学の時に見た「大きなステージ」はニューヨークだったのかもしれない。
(河野洋)

Tamurorie
■9月11日(日)7:00pm
※レギュラー出演:毎月第2日曜7:00pm
■会場:Silvana
 300 W. 116th St.
 Tel: 646-692-4935
■料金:無料
silvana-nyc.com



河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。 ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
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