2015年8月7日号 Vol.259


アシッドジャズの先駆者
表現したい「現在の自分」
MONDAY満ちる


時に欲望を抑えることで、物事は思わぬ展開を招く。だが形は変われども、人間の本質は変らないものだ。機が熟せば才能はスパークする。MONDAY満ちるが新人女優として華々しく銀幕にその姿を現した1987年、誰が今の彼女を想像したことだろう。

ジャズピアニスト秋吉敏子とジャズサックス奏者チャーリー・マリアーノの間に生まれたMONDAY満ちるは、胎児の頃からジャズが子守唄だった。そして、子供の頃からモダンダンスとバレエを始め、音楽を聞いて体で表現することを学び、フルートでクラシックの世界に足を踏み入れた。
「アメリカでは日本の学校に比べて体育の時間が少なかったので、母の勧めで健康な体を作るためにもダンスを始めました。85歳になる母が今でも元気に活動しているのは、体を動かすことの大切さを知っていたからだと思います」
音楽が切り離せない環境で育った彼女にとって、両親の助けを借りてその道へ進むことは容易なことだったはずだが、自立した人生を生きることは、彼女にとって、とても大切なことだった。
ロサンゼルスで国際映画配給会社に勤めながら音楽活動を続けていた時、MONDAYは作詞家の阿木燿子に出逢う。そして、皮肉にも彼女に渡したデモテープと写真は、レコードデビューではなく女優デビューへの道を切り拓く結果となる。 女優としての経験は全くなかったが、相米慎二監督に抜擢された彼女は、映画「光る女」で主人公を演じ、第11回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。
「オペラ歌手の役でしたが、私がイタリア人のハーフということやフルートでクラシックの知識があって、何よりも素人俳優を起用することで知られている相米監督のお目にかなったのだと思います」
「秋吉満ちる」として映画界にデビューすると、この後、舞台、CM、テレビ、ラジオ、そしてモデルと、思いとは裏腹に彼女のキャリアは音楽から遠ざかって行く。
しかし年を重ねるに連れ、音楽への情熱は更に深まりを増した。そして、ついに1991年ヴァージンレコードから念願のデビュー・アルバム「mangetsu「を発表。
「軌道に乗っていた女優業から音楽に戻ったのは、やはり一番心に響いていたのが音楽だったからです」

彼女は日本におけるアシッドジャズの先駆者的な存在であると同時に、ジャズ、ソウル、ブラジリアン、ラテン、ダンスミュージックと言った幅広い音楽性を織り込んだ音楽を絶妙のセンスでクリエイトできる貴重なアーティストの一人だ。それは、DJ Krush、モンド・グロッソ、UA、小野リサと言ったコラボレーターたちの名前を見ても容易に想像できる。
そんな彼女が表現したいものは、「現在の自分」だ。歌詞を書く時、いつも世界に反映される自分や、他の人たちとの接点や共通点が何かなどを意識する。
楽曲面で言えば、メロディーやリズム、そしてハーモニーの絶妙な絡みの中で、如何に心を引っ張るものが生み出せるかが、最大のチャレンジだと言う。
そして彼女はここ数年、母、秋吉敏子との共演も行っている。今年7月1日にリリースされた初の親子共演アルバム「ジャズ・カンヴァセイションズ」=写真=には、母と娘という関係を越えたプロのアーティスト同士の真剣勝負の音がそこにある。
「リハーサルとライブ本番で見せるママの変身ぶりには圧倒されます。観客として何百回と見ていますが、実際にステージ上で伝わってくるエネルギーは言葉で表現できないくらい凄いの!」と母へのリスペクトを忘れない。

そんな彼女が、母が何度となく出演したバードランドで初のソロ・コンサートを行う。「私は決してジャズの人ではありませんが、今回のライブでは、伝統的な会場に相応しい、ジャズ寄りの私を見てもらうつもりです」と意気込みを見せる。
MONDAY満ちるの音楽には熱い情熱が秘められている。ソウルフルなボーカルが脳を心地よく刺激し、アーバンなビートがボディを打つ。美しいハーモニーはクジャクの羽の様に鮮やかに広がる。暑い夏だからこそ、きっと聞きたくなる音楽だ!(河野洋)

Monday Michiru
■8月20日(木)6:00pm
■Birdland NYC
 315 W. 44th St.
 Tel: 212-581-3080
■$25(+$10オーダーミニマム/1人)
www.birdlandjazz.com



河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。 ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
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