よみタイム|2024年9月20日号・Vol.478デジタル版 & バックナンバーはこちら

ホイットニー・ビエンナーレ

インターネットとAIがもたらす影響を考察
「XHAIRYMUTANTX」
ホイットニー・ビエンナーレで

ホイットニー美術館恒例の「ホイットニー・ビエンナーレ2024」が、3月20日(水)に始まり、8月11日(日)まで開催中だ。サブタイトル「本物よりもっと良いモノ(EVEN BETTER THAN THE REAL THING)」は、アイルランドのロックバンド、U2が1991年に発表した楽曲名にインスパイアを受けたもの。現在、最も差し迫った社会的問題をテーマにした、71組のアーティストとコレクティブを特集する。

ホイットニー美術館
①画像生成サイトでユーザーが制作した画像群

本展のために制作を依頼されたホーリー・ハーダン(マルチメディア・アーティスト、作曲家)と、マット・ドライハースト(マルチメディア・アーティスト、ミュージシャン、技術研究者)による「xhairymutantx」=表紙写真=は、6階ギャラリーと、同館のオンラインギャラリー「アートポート(artport)」で展開。AI(人口知能)を利用し、その学習能力に焦点を当てた実験的試みだ。

「実験音楽界」をリードするホーリー・ハーダンは、加工したボーカルや電子音を駆使し「ミュータント・ポップ」を生み出す才女。AIとコラボした楽曲や自身の声をAIに学習させたAIボーカル・ディープフェイク「Holly+」などを発表。文字入力から画像を生成するAIプログラムに「Holly Herndon」と入力すると、彼女の特徴=白い肌、赤い髪、カットされた前髪、青い瞳=をもった画像が出来上がるほど、デジタルアート界では有名な存在だ。

「xhairymutantx」では、そんなハーダンの特徴をベースに、新たな文字入力から画像を生成できるようAIを訓練。AIモデル内で、彼女のアイデンティティを変容させる。

専用の画像生成サイト(別記)では、実際に文章を入力して画像を生成し=写真①=、ギャラリーに保存可能。誰でも無料で利用できる。

AIの発達により、「本物」と「偽物」を見分けることが難しくなってきた現在。ユーザーの指示により、簡単に「独自のハーダン」を生み出せるという体験を通し、「自らの決定が及ぼす範囲と影響力」について、問いかける。

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ホイットニー美術館
筆者が「Gundam fights Pokemon(ガンダムがポケモンと戦う)」と入力したことで生成された1枚。ユーザーの「指示」がどのようにAIに影響を与えるかを実際に体験できる

ホイットニー美術館では、毎週金曜・午後5時から10時までの「フリー・フライデー・ナイト」と、毎月第2日曜の「セカンド・サンデー」を、入場無料で開放。共にウェブサイトからの予約が必要で、定員に達し次第締め切られる。

Holly Herndon and Mat Dryhurst: xhairymutantx

ホイットニー美術館

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