2016年3月25日号 Vol.274


努力を積み重ねた
プリマドンナ
宗田 舞子


幼心に膨らませた夢の風船は、やがて大きな気球となり、海を越え、大陸を越え、ずっとずっと飛び続けている。情熱の分だけより高く、努力の分だけより遠くへ。

東京に生まれた宗田舞子(そうだ・まいこ)が現在ソプラノ歌手としてニューヨークで活動するまでには長い道のりがあった。ピアノを始めたのは3歳の時。ピアノが好きだった宗田は中学になると合唱部に入り、伴奏者としてピアノ演奏の機会を増やそうとした。そんなある日、宗田の歌声を聞いた担当の先生は、ピアノではなく歌に転向することを勧める。
他人に言われて自分の道を変えてしまっては、うまく行かなかった時に後悔してしまう。提言をよそに宗田はあくまで自分を貫き、ピアノを続けることにした。
しかし、高校に入っても同じだった。宗田の歌を聞いた先生に「声がいい」と声楽の道を勧められる。それでも、宗田の決意は固く、結局、その後、東京音楽大学ピアノ科に進学する。
大学では専らピアノの演奏が主だったが、2年生の時、副科声楽を始め、運命的な出逢いに心が揺らぐ。それがオペラだった。中でもヴェルディの「椿姫」は宗田の心をつかんで離さなかった。いつか主役のヴィオレッタを演じたい。そんな思いに駆られ、歌の比重が大きくなっていく。その後、同研究科オペラコースを修了し、オペラ歌手としての活動が始まった。
そんな時、宗田に一大転機が訪れる。ニューヨークへの招待状だった。友人も知人もいない、そして言葉も文化も習慣も全てが違う異国の街。ゼロからの再出発という苛酷なビッグチャンス。

右も左もわからない宗田ではあったが、果敢に挑戦を続け、来米した2011年からジュリアード音楽院オペラ・ワークショップ・クラスに1年半在籍、同年ニューヨーク・グランドオペラの音楽監督ヴィンセント・ラ・セルヴァ氏に師事。2013年6月からは世界的テノール、フランシスコ・カサノヴァ氏に師事するようになる。
同氏は三大テノールの一人、ルチアーノ・パヴァロッティの控えも務めた人で、本人から練習方法を尋ねられたという逸話があるほど実力のある人物。宗田の最新アルバム「The Nature of Beauty」では歌唱指導も務めた。
「アメリカ生活の中で最大の苦労と言えばレコーディングでした。カサノヴァ先生の求めるものが、自分が満足できるレベルより更に高く、そのギャップを埋めるのに本当に努力しました。先生は絶対に妥協をしないので、終わりが見えず、何度も挫けそうになりました」
しかし、最後にはカサノヴァ氏も納得するアルバムが完成。宗田にとっても大きな自信となった。

人生は奇跡の連続だ。子供の頃、引っ込み思案で人に話かけることすらできなかったと言う宗田は、2013年9月マーキンホールに出演、10月カーネギー大ホールでソプラノ・ソリストとしてデビュー、2014年にはマンハッタンで初のソロリサイタル、2015年にはニューヨークで初のレコーディングと、日本にいる時には思いも寄らなかった出来事が連鎖反応の様に起き続けている。

そんな宗田には優しい面もある。「初めて出演して感動しました」というカーネギーホールの本番の日、仕事帰りに来場してくれる友達の為に、夕食を食べる時間もないだろうと、おにぎりまで作って用意したと言うのだ。
「人の先を読んで、行動しなさい」
こうした「思いやり」は宗田の母の教えの一つでもあり、今や一児の母となった宗田舞子の人間としての魅力でもある。
とは言え、歌手と母と妻の3役は高度な自己管理能力が必要とされる。カサノヴァ先生のレッスンに毎週通い、歌詞を覚える為に、料理しながら、寝る前、車を運転しながら、一時も無駄にすることなく努力を続ける。更に歌詞は、イタリア、スペイン、英語などの外国語だ。朝から夜まで休むことなく、日々の努力を積み重ねるしかない。ローマは一日にして成らず。

宗田舞子は米国での5年間の貴重な経験を終え、今春、活動の拠点を再び日本に移す。「ニューヨークの寒さを通して本当に強くなりました。様々な難関を乗り越えて来たので、これからは何があっても大丈夫です」と自ら太鼓判を押す。
そして、帰国前の最後のソロリサイタル。スペシャル・ゲストには、師匠のフランシスコ・カサノヴァ(テノール)、箏奏者の木村伶香能、ピアノ伴奏に橋本裕美を迎え、選りすぐられたイタリアン・オペラと日本歌曲を歌う。正に宗田舞子の集大成とも言えるコンサートとなる。

飛翔し続けるプリマドンナ、宗田舞子。今、翼を広げ、さらに上昇気流に乗る!(河野洋)

■4月10日(日)7:00pm
■会場:Christ & St. Stephen's Church
 120 W. 69th St.
 Tel:201-446-7317
■一般$25、7歳〜学生$10
 6歳未満無料
bpt.me/2498959


■4月17日(日)4:00pm
■会場:Japanese American United Church
 255 7th Ave.
 Tel:212-242-9444
■$20(寄付推奨)


★宗田舞子 maiko-souda.com


河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。 ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
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