2016年1月29日号 Vol.270


狂気と知性、剛と柔
個性がぶつかり、絶妙に融合
オールドモンク


(左から)イアン、ジョッシュ、ツグミ Photo : Ry Marie Images


ニューヨークを拠点に活動するロック・トリオ「オールドモンク」(OLD MONK)は、狂気と知性、剛と柔、決して混ざり合うことのない組み合わせを、理路整然と音楽で具現化する。ほとばしる情熱を、氷の彫刻で包み込み、炎でメラメラと燃やす。そのトライアングルを作るのが、ジョッシュ(ギター/メインヴォーカル)、イアン(ドラム/ボーカル)、紅一点のツグミ(ベース)だ。

物語はコロラド州の大学でのジョッシュとイアンの出逢いから始まった。
「実は(生まれ育ったコネチカットから)コロラドに引っ越して直ぐニューヨークに住みたくなった。それもあって深く考えず音楽とは関係ないNYの法学部へ進学した」と法律を学びながらもロックしていたジョッシュ。
2人はインターネットで創作活動を続けた。そして、2009年。ジョッシュの後を追うようにイアンがNYへ拠点を移す。事実上バンドの活動が始まり、「オールドモンク」と命名された。
バンド名には取り分け意味がなかったとイアンは言う。
「可愛くも賢くもなく、馬鹿らしくも仰々しくもない名前。そこで思いついたのがオールドモンクだった、ってだけかな」
その後、ベーシストが脱退し、オンライン掲示板にメンバー募集を出した二人の前に現われたのが、テクノも好きという日本人の女性ミュージシャン、ツグミだった。2011年の夏のことだ。
「ピアノでも習おうかなぁ」と掲示板を眺めていたツグミは、目に留まった「ベース募集」に軽い気持ちで応募してしまう。そして、ジョッシュたちから送られて来た歌詞つきのコード譜と曲のファイルたち。
テスト勉強のように曲を覚えて、一週間後に新生オールドモンクの初ライブに出演。ショーは成功し、ツグミはギャラまでもらう。
「彼らの曲にラブソングやバラードがなかったのと、歌詞も凝っていて『空が青い』とか『愛してる』とか、ありきたりな言葉で固まられてはいなかった」と笑うツグミ。楽曲の構成も複雑で面白かったのも魅力だったらしい。
「ツグミが加入して、ベースの音量が大きくなったよ」と言うジョッシュ。ラウドでパンチがあってハードヒッターのツグミの骨太ベースは、オールドモンクのサウンドを占める重要なパートになった。

オールドモンクはジャンルで言えば、「プログ・パンク」。ジェントル・ジャイアントに代表されるような、複雑な構成と激しい変化、突き動かされるメロディラインが特徴の70年代のプログレッシブ・ロック。ピクシーズを筆頭とし、ラウドでエネルギッシュ、そして曲が短いのが特徴の90年代におけるポスト・パンク。対極的とも言える二つの音楽性は、三者三様の個性のぶつかり合いによって絶妙に融合され、独自の世界観を生み出す。
2012年になると、オールドモンクはロサンゼルスのレコード会社「eeniemeenie records」と契約し、ブルックリンのシーサイド・ラウンジで録音されたデビュー・アルバム「Birds of Belize」をリリース。
2014年、パワーポップとプログ・ロックが見事に融合された第2作「Posing as Love」を発表。同じ曲は3回までしかやり直さないというルールに基づいてライブレコーディングされた本作は、ツグミがエンジニアを務めた。バンドは同年夏に3週間のツアーを行う。

ジョッシュは趣味で始めたと言う「music history in gifs」というブログで、音楽ビデオを発表している。この映像は、8ビットのグラフィック画像を1フレームずつ手作りし、莫大な時間をかけて、動画ソフトで編集する手法を使って制作している。このコンテンツが高く評価され、このブログがきっかけになったというオールドモンクのファンもいると言う。「ミュージックビデオの撮影は、基本的に退屈だから嫌いだ」と言うジョッシュは、オールドモンクの音楽ビデオも何本か同じ手法で作っているが、8ビットの、ほのぼのとしたギザギザ感が何とも微笑ましい。

オールドモンクは、そのライブにおいて、破壊的なパワーとエネルギーでオーディエンスを圧倒しながらも、幾何学的で難解なビートとメロディで頭脳を心地よく刺激する。その音楽は、正に現代のロックの経典と言えるだろう。
(河野洋)

Old Monk tour w/ Dressy Bessy
■2月11日(木)8:00pm
■会場:The Bowery Electric
 327 Bowery
 Tel: 212-228-0228
■前売$10、当日$12 ※年齢21歳以上
www.theboweryelectric.com



河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。 ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
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