2017年1月13日号 Vol.293

電子音と耽美的な声の融合
音楽プロジェクト「ライア・ワズ」
ヴォーカリスト レイチェル・ブロットマン



即興ジャズの狭間から芽を出すオーガニックなエレクトロニック・ポップ。ブルックリン在住のヴォーカリスト、レイチェル・ブロットマンが、かつてのレイチェルから脱皮する音楽プロジェクト「ライア・ワズ(Raia Was)」を始動させる。

ニューヨークのチェルシーに生まれたレイチェルは、母と同じバレエ学校へ5歳から通った。しかし、彼女の目に興味深く映ったのはバレエよりも伴奏のピアニストだった。バレエ講師に音楽性の高さを指摘されたレイチェルは、日本人のピアノ教師からクラシックを勉強する。
古典音楽の旋律を鍵盤で追っていた14歳のレイチェルに、突如、巨匠チャールズ・ミンガスが立ちはだかる。初めて「ジャズ」を認知した時だった。小さなレイチェルは一気にジャズの世界へ引き込まれていく。今、振り返ると、クラシックとは違う音楽と思いながらも、キース・ジャレットの不朽の名作「ザ・ケルン・コンサート」を8歳の頃には聴いていたというから、レイチェルのジャズへの傾倒は、実は幼少の頃から始まっていたわけだが。
狂気の才能ミンガスに狂ったティーンエイジャーは、マンハッタンのノーホーにあったナイトクラブ「The Fez」へ足を運ぶ。毎週木曜のナイトライブでミンガス・ビッグ・バンドを聴く為だった。未成年者と知りつつも、温かく迎え入れた店員が差し出してくれるオレンジ・ジュースを飲みながら、ジャズに耽る未成年者。それは、ニューヨークならではの風景だったかもしれない。
高校生時代は理解できないながらも一生懸命、ジャズを研究する。ニューオリンズの音楽大学ではジャズピアノを学ぶが、20歳になると興味の矛先はピアノからボーカルへ変わっていく。
「ニューオリンズという街は確かに面白かったけど、どちらかといえば、トラッド・ジャズが中心で、私はもっとコンテンポラリーなものを求めていた。それに、私はやっぱりニューヨークを愛していて、ニューヨーカーだったのよ」というレイチェル、大学を卒業すると同時に故郷に戻り、ブルックリンのレコーディング・スタジオで働き始める。
そこで体験した音楽はジャズの中でもエクスペリメンタルなものが多く、彼女のジャズの概念を大きく変える。
「あの頃の経験が、理論的なジャズから解放してくれた。以前は、コードを複雑にしたり、変拍子を使ったりして、ジャズ音楽を作曲していて、どちらかというと頭脳の作業という感じだったけど、今は、必要なものと不要なものを見極め、シンプル化することにフォーカスしている。歌詞の面でも、大きなテーマに基づいた反復的なものが好きで、マントラなどに興味がある。逆に、説明的だったり告白のようなものは好きじゃない」とジャズの手法を使った作曲と自分の詩の世界について語るレイチェル。
ライア・ワズは、オーガニックな音空間の中で、無機的な電子音と耽美的な声が瞑想的に融合する個性的なエレクトロニック音楽を創造している。
「それでも私の作曲のプロセスは、ジャズの即興がベースになっているの。『シンプル=誠実』だと思うし、私はシンプルなものに満足を感じる。でも、同じメロディーを何度も同じように歌わないし、やっぱり私の基本はジャズだと思う」

ライア・ワズはレイチェル・ブロットマンによる新しい音楽プロジェクトだ。バンドは、タイラー・ギルモア(エレクトロニックス)、アヴィヴァ・ジェイ(コーラス)、ブライアン・ビソーディ(ドラム、サンプリング)で構成される。そして、このメンバーで出演するショーケースが来る2月1日、グリニッチヴィレッジにある「Le Poison Rouge」で開催される。2015年8月に同会場でスタートした「On the Rise」シリーズの一環だ。また、同メンバーで録音されたデビュー・アルバム「ボディダブル」も今年リリースされる。ホームタウン以外でも、1月21日にはロサンゼルス、4月3日には東京でもライブが決まっているというライア・ワズ。
「春には初めて日本へ行くの。今回は単独でライア・ワズのソロヴァージョンを日本の皆さんに見てもらえます。日本の文化に触れ、自由に変化する自分を楽しみたいと思っています。ピアノを使ったアコースティック、ノートパソコンとミニ・シンセサイザーを使ったエレクトロニックのライア・ワズを披露するつもり」と、東洋の神秘の体験を前に心を躍らせる。

常にニューヨークが目まぐるしく変化するように、生粋のニューヨーカー、レイチェル・ブロットマンはライア・ワズと共に「ジャズ」を進化させ、「かつてのレイチェル」(Raia Was)が新しい音楽を作り出していく。(河野洋)

On the Rise at LPR
■2月1日(水) 8:30pm
■会場: Le Poison Rouge
 158 Bleecker St.
■料金:$10(入場18歳以上)
http://lpr.com

NYーTOKYO
■4月3日(月)7:00pm
■会場:劇空間えとわ〜る
 新宿区市谷砂土原町3-2
 市ヶ谷フラッツ1階
■料金:3,500円+1,000円(1ドリンク&チャーム)
■Tel: 090-7833-3710


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