2017年9月8日号 Vol.309

[第81回]
災害とイエローキャブ


ハリケーン・ハービーの報道を見ていて、近年のニューヨーク市でのハリケーン被害を思い出しました。
2011年のアイリーンの時は、「来るぞ、来るぞ」と前触れがすごかったので、ニューヨーク州が地下鉄やバスを早々とストップさせました。夜11時ごろには、公共の交通機関がシャットダウンされ、車両も路上から一掃されたと記憶しています。店も全部閉まって大騒ぎした割には、ハリケーン自体は大したことなかったですよね。
あの日、僕はいつものようにナイトシフトでキャブを走らせていて、それこそ夜11時ごろに、アッパーウエストサイドのフェアウエーのマネージャーを拾いました。
正直、あの時はまだハリケーンが肩透かしになるとは誰も知らないので、みんな「危機感」を持っていました。このマネージャーさんも「ブロンクスの自宅に帰りたいんだけど、大丈夫かな」と不安げに言って乗ってきました。地下鉄は走っていないし、キャブも走っていなかったらどうしようと思っていたらしいです。
僕は「もちろんいいよ」と乗せましたが、実際あの時は走っているキャブの数も少なかったですね。日本は台風もあれば地震もあって、僕なんか九州出身なのであのくらいのハリケーンはへのカッパ。ところが、ニューヨークのキャブドライバーでも、例えばアフリカ移民などは災害に免疫がないのか、みんな恐れおののいてさっさと休業してましたから。
競合キャブが少なくなったら、じゃあ僕がその分儲けたかっていうと全然そうじゃないですけどね。だって店もオフィスも閉まって、誰も街を歩いていないので、客がいないんですもん。それでもアイリーンの時は朝まで仕事ができたのですが、翌年のサンディーの時は深夜の運転禁止令が出て、ほとんどど仕事になりませんでした。
それに、なんとかキャブを転がせるようになっても、あの数日間は、昼間のドライバーからガソリンを満タンにしないままキャブを引き継ぐことになり、結構困りました。
ガソリンスタンドがどこもいっぱいで、2時間も待つっていうんですよ。ヨンカースに行けば待たないってテレビで言っていたので向かったら、僕みたいなのがみんな向かっていて、すごい渋滞。
ちょうどその時、日本の母の具合が悪く、渋滞中に携帯で電話していたら、お巡りに咎められました。でも、「母の緊急事態。車も動いてないし」と言ったら、なんと見逃してくれて、珍しいこともあるもんだなあと思ったものです。
ニューヨークもハリケーンのシーズンに突入します。何事もなく済みますように。
(白石良一)



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