2017年11月3日号 Vol.313

難解なストーリーに挑戦!
シュールでレアなオペラ
「皆殺しの天使」MET初演


David Adam Moore as Col. Álvaro Gómez, Christian Van Horn as Julio, Rod Gilfry as Alberto Roc, Christine Rice as Blanca Delgado, Audrey Luna as Leticia Maynar, and Sir John Tomlinson as Dr. Carlos Conde in Adès' "The Exterminating Angel." All Photos: Ken Howard/Metropolitan Opera


Kevin Burdette as Señor Russell and Alice Coote as Leonora Palma


David Adam Moore as Col. Álvaro Gómez and Amanda Echalaz as Lucia de Nobile


ルイス・ブニュエル監督による同名のスペイン映画(1962年)に触発され、トーマス・アデス(1971年3月1日ロンドン生まれ)は、演出家のトム・ケアンズと台本を共同制作し、シュールなオペラが完成した。初演は2016年のザルツブルク音楽祭で行われた。アデスはイギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテン(「ピーター・グライムス」や「戦争レクイエム」などのオペラや「青少年のための管弦楽入門」などが代表作)の再来と言われ、METでは2014〜15シーズンの「テンペスト」に続く新作発表となる。
今回は、難解な映画のストーリーに挑戦し、作曲者自身がタクトをとる。幽閉され豪華な衣装に身を包んだブルジョワたちの行動、帰りたくても帰れない、特殊な世界に閉じこもって自分から殻を破ろうとしない上流社会の秩序が皮肉に反映されている。映画の原作では、ついに部屋から出ることに成功したブルジョワたちが、教会のミサには参列するものの、今度は教会から出られなくなるというものだ。が、オペラでは、部屋からは出られたものの…驚く結末に変更されているそうだ。
音楽は、パーティに相応しいワルツから、徐々にドラマのストーリー展開のように恐怖に満ちた不協和音へと変わっていく。レアなオペラを鑑賞したいという上級者向けだが、原作の映画をご覧になった方には特にお勧め。

▼あらすじ
1960年代のスペインが舞台。オペラ鑑賞のあと、上流階級の夫婦ルチアとエドムンド・デ・ノービレは邸宅に客人を迎えて晩餐会を開く。ところが、開始直前に使用人たちは一人の執事を除きなぜか急いで退去してしまう。ディナーが終わり、みんなが歓談を楽しむうちに明け方となり、14人全員が邸宅から出られなくなってしまう。彼らは幾日も一つの空間に閉じ込められているうちに心身ともに狂ってしまい、水や食料も底を尽いて喧嘩や自殺まで勃発する。脱出のために根拠もなく犠牲者を求めるうちに、オペラ歌手レティシアの提案で、閉じ込められた当初の瞬間をもう一度再現して、ようやく脱出に成功する。が、脱出できた喜びも束の間、さらなる災難が彼らに降りかかる。(針ケ谷郁)

THE EXTERMINATING ANGEL MET初演 英語上演
■11月3日/7日/10日/14日/18日(M)/21日
■作曲:トーマス・アデス
■原作:ルイス・ブニュエル監督による同名の映画
■初演:2016年ザルツブルク音楽祭
■演出:トム・ケアンズ
■指揮:トーマス・アデス
■配役:レティシア:オードリー・ルーナ
    ルチア:アマンダ・エシャラズ
    シルヴィア:サリー・マシューズ
    レオノーラ:アリス・クート
    ブランカ:クリスティン・ライス
    フランシスコ:イェスティン・デイヴィーズ
    エドムンド・ジョセフ・カイザー
■チケット:212-362-6000
www.metoperafamily.org



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