2017年3月17日号 Vol.297

会場包んだ「一体感」
鼓童「打男2017」

Photo by Rebecca Smeyne


世界各地にファンを持つ日本の太鼓芸能集団「鼓童」のニューヨーク公演「打男2017」が、ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック(BAM)で3月1日から4日まで、4日間に渡り開催。好評のうちに全公演を終了した。

BAMでの公演は2015年「ワン・アース・ツアー~神秘」に続き2度目。演出を手掛けたのは、2012年から「鼓童」の芸術監督を務める歌舞伎役者・五代目坂東玉三郎氏。今回の「打男」は若手中心に編成され、「体力が続く限り打ち続ける!」がコンセプト。
ショーの始まりは、小さく響く木琴。厳粛で神聖な雰囲気が漂い静まり返る場内は、まさに嵐の前の静けさか…。やがて、中央に配された大太鼓を、半裸の男たちが乱れ打つ。筋骨隆々の肉体に秘められたエネルギーが余すところなく放たれ、ノンストップでバチが唸った。
「太鼓は日本古来の伝統芸能で、あくまでも響きそのものを聴く」というのが日本人が持つ一般的な印象。しかし、独自の美意識や世界観を持つ玉三郎氏が演出を手掛けたことで、「ビジュアル的にも観せる」という要素が加わっている。
曲が変わるごとに太鼓を移動させ配置を変更。客席からの「視点」を変えることにより、観客は男たちのパフォーマンスを360度から観賞することができる。背中や胸に浮き出る筋肉、横向きになった腕の動き、高速で動くバチの「残像」などが美しく、観客を飽きさせない。
素晴らしいパフォーマンスには、拍手、掛け声、時には口笛やスタンディング・オベーションで応えるのが、アメリカライブシーンの流儀。それは一方的に「観る・聴く」だけではなく、「一緒に楽しむ」という習慣でありアメリカの文化だ。観客たちは曲の合間であっても惜しみない拍手や歓声を上げ、その「感動」を何度も表していた。
フィナーレは、大小の太鼓を全ての男たちが打ち鳴らした。体の奥に響く音、男たちから飛び散る汗、まさに魂を込めた演舞が、会場を大きく揺さぶっていく。その迫力たるや間近で打ち上げ花火を見ているよう…高揚感に襲われ、目が離せない。
高々とバチを振り上げ、「ダダン!」とフィニッシュ。太鼓の音に匹敵するような大歓声と拍手が巻き起こると、男たちは一転して笑顔を見せる。日本とは異なるアメリカでの「一体感」を感じていたに違いない。その表情に、達成感と安堵感が見えた。

観劇した作家の真山仁氏は、「太鼓を聴きに来たのではなく、『良いライブ』『良いグルーヴのあるジャズ』を共に楽しんでいるような、そんな印象さえ受けました」とコメント。まさに「我が意を得たり」だ。
ミニマルでダイナミック、伝統に基づいた革新。これはもう単なる「太鼓」ではなく、「視覚芸術」だ。次回のNY公演が待ち遠しい。(KC)


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