2017年3月17日号 Vol.297

時代を意識
こだわりのサウンド
シンガーソングライター ズッケロ


Photo by Giovanni Gastel


世界に誇るイタリア史上最高峰のシンガーソングライター、ズッケロ。2016年9月から続行中の「ブラックキャット・ワールドツアー」では、かの有名なアレーナ・ディ・ヴェローナにおいて開催された11回公演で11万5000人を集め、名実ともに揺るぎない人気を誇る。

1955年、イタリアのロンコチェジに生まれたズッケロは、若い頃からソウル、ブルース、ゴスペルが大好きだった。70年代はR&Bのバンドで活動し、80年代にはシンガーソングライターとして、ソロになった。今でも彼の音楽の嗜好は一貫して変わらない。
「60年代後半から70年代にかけて活躍していたレイ・チャールズ、アレサ・フランクリン、サム・クック。アフロ・アメリカン音楽が僕の音楽の原点でありルーツなんだ。学生時代の黒人の友達が、そんなアーティストたちを紹介してくれて、ぞっこん惚れこんでしまったんだった。特にオーティス・レディングは僕のヒーローだった」
イタリアと言えばオペラだ。時に心を擦り切らすような感情の哀しみを、時に天へ昇華するような魂の叫びを表現するズッケロの歌唱法と彼が生み出すメロディーセンスは、明らかにイタリアオペラがDNAに流れていることを証明している。ズッケロの独特な音楽スタイルが生まれたのは、イタリアオペラの土壌と、アメリカのルーツ音楽の肥やしの融合はごく自然発生的な流れだった。
そんなズッケロに惚れ込んだアーティストたちは数え切れない。ルチアーノ・パヴァロッティ、エリック・クラプトン、マイルス・デイヴィス、BBキング、スティング、ボノ、レイ・チャールズ、ジェフ・ベック…。オペラ、ジャズ、ロック、現代のポピュラー音楽人名鑑かのようなスターたちが、ズッケロの共演者として名を連ねている。
「これまでに共演した著名人は、偉大なアーティストであり、素晴らしい人間たちだった。マイルス・デイヴィスとの共演も、彼が僕のオリジナル曲を取り上げたいと言ってくれたおかげなんだけど、その『Dune Mosse』はソウルやブルースと地中海音楽が最もうまく融合された曲だった。ニューヨークへ行って、一緒に録音したんだけど、本当に素晴らしい時間だった」
今後、個人的に共演したいアーティストもいる。
「ピーター・ガブリエルとは友達だけど、なかなかきちんとした形でコラボレーションの機会がない。それから、もう実現不可能になってしまったけど故エイミー・ワインハウスもプロジェクトをコラボしたかった一人だね。でも、どんなコラボにしてもアイデアが良くなければ共演する意味はない」
ズッケロは、時代の変化に惑わされることなく自分の音楽を追求し、ファンのみならずプロの音楽家たちにも愛され進化する。

最新作「ブラックキャット」は豪華ゲストで固められている。「ドン・ウォズ、ブレンダン・オブライエン、T・ボーン・バーネットという3人のプロデューサーを集めたこのアルバム・プロジェクトが制作できたのは本当にラッキーだった」と語るズッケロ。
マーク・ノップラー(ダイアー・ストレイツ)は「Ci Si Arrende」で渋いギターを聴かせ、ボノ(U2)は「Streets Of Surrender(SOS)」で深い味わいのある詞を書き下ろし、エルヴィス・コステロは「Turn The World Down」でいぶし銀の歌詞をプレゼントしてくれた。
「曲を書く時はどういう方向性になるかわからず、壁を前にして作るようなものだけど、『ブラックキャット』の時は、クエンティン・タランティーノの映画『ジャンゴ 繋がれざる者』や『それでも夜は明ける』と言った作品をイメージした。米国南部の囚人や奴隷の歌を、シンプルでチープなドブロ・ギターで歌うような感じだった」とアルバムが制作された過程を説明する。
また同アルバムは全曲、デジタルとテープを使ったアナログのの2つの録音方式を行い、マスタリングという録音の最終段階で最善のサウンドを選んだという。今の時代を意識した上でサウンドを作り出すこだわりがそこにはある。

そんなズッケロがワールドツアーの一環として、3月31日にニューヨークのビーコンシアターへやってくる。「ブラックキャット」の曲を中心としたズッケロのヒットパレードが2時間以上にわたって楽しめるという。バンドは昨年から一緒にツアーをしているメンバーたちで、脂の乗ったグルーヴが満喫できそうだ。

61歳になった今でも精力的にライブ活動を続けるズッケロ。「死ぬまで続けたいね」と笑う。
「ステージに立つのが好きなんだ。人と会うのが好き、パーティみたいでステージの上の方が気が楽なんだ。世界中をツアーしたい」
布袋寅泰も出演する初の日本公演も5月に決まっているズッケロ。彼の人生の世界ツアーは、これからもまだまだ続きそうだ。(河野洋)

Black Cat World Tour 2017
■3月31日(金) 8:00pm
■会場: Beacon Theatre
 2124 Broadway
■Te: 212-465-6500
■$49.50〜
www.beacontheatre.com



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