2017年3月17日号 Vol.297

超クールでモダン
社会と直結した共用スペース
ワークスペース「A/D/O」


屋根のグラフィティや風景が映り込む鏡面のスカイライト


A/D/Oのパブリックスペース


A/D/Oの外観(All photos courtesy of A/D/O by Matthew Carbone)


昨年秋から話題を集め、この1月末に正式にオープンしたデザイナーのためのワークスペース「A/D/O」。ブルックリンのグリーンポイント地区に位置し、周囲は近年、高層ビルや巨大ガレージの建設が目立つ再開発エリアだが、A/D/Oの佇まいは平屋の煉瓦造り。グラフィティで埋まった壁面など昔ながらの風情で、一見、見過ごしてしまいそうだ。
しかし、中に入れば超クールなモダンスペースが目に入る。広さは2万3000平方フィート。メンバー制のワークスペースのほか、誰にでも開かれたパブリックラウンジがあり、持参のPCを広げ作業する人々が後を絶たない。もちろんWiFi完備。今月末にオープンが予定されているレストラン「ノーマン」のインテリアも、いわゆるコミューナルな長テーブル仕様で、クリエーターの交流の場としての側面が強調されている。
スペースの母体となっているのは、「デザインアカデミー」なるシンクタンクだ。オープン記念のイベント「ユートピアvsディストピア」では、未来の都市生活をデザインするさまざまなアイデアが紹介された。講師陣には、ボストンのマサチューセッツ工科大学修士課程「メディアラボ」の教授やデザイン批評家らが名を連ね、工場生産から介護まで人の代わりを務めるロボット工学の実情など、話題のテーマで発表が続いた。この分野は日本の独壇場のようで、日本社会を例に進歩や問題点が指摘されたのも興味深い。
メディアラボは早くからテクノロジーとアート、建築デザインの分野を横断しつつ、在野の企業とコラボするという形でアイデアの実現に努めてきた。A/D/Oの目的もおそらくそこにあるのだろう。アートやファッション、建築を含めた広いデザイン分野の革新であり、アイデアの創出の場。今後もさまざまなイベントが予定されているが、資金面でのサポートは、BMW傘下の自動車ブランド「ミニ」が担っている。スペース名のA/D/Oとは、実は、1959年の初代ミニ(当時はイギリスの自動車会社)を生み出した設計チーム「アマルガメイテド・ドローイング・オフィス」の頭文字だという。
また、物理的な面でのサポートとして画期的なのが、月極めでレンタルできるオフィスの提供だろう。一人で事務所を構えるにはまだ早い、いや、ニューヨークのレント高騰に追いつけない新進デザイナーたちがデスクを並べ、交流する。プロトタイプ製作に必要な3Dプリンターなど最先端の機材や施設を共有できるのも有利だ。ちなみにレントは月額600ドルとのこと。
建物全体の改装やユニット家具のデザインは、ブルックリン拠点の建築事務所「nアーキテクツ」が担当した。パイプがむき出しの天井やレストラン部分の壁面など、もともとの倉庫にあったラフな要素を生かしながら、ミニマルで機能的なスペースが広がっている。中でも話題は、エントランス中央にあるペリスコープ(潜望鏡)型のスカイライトだ。近隣の景色ばかりか、対岸のマンハッタンのスカイラインが映り込み、エンパイアステートビルの先っぽが見える。花柄のグラフィティは、屋根を彩る新作アート。マイク・ペリーの作品だ。
一方、バックヤードならぬ屋外のスペースには、樹木や建築資材を応用したランドスケープ型のアートが設置され、ちょっとしたガーデン空間となっている。さりげなく置かれた椅子も心地よい。思えば、昨年春にMoMAで開催された日本の建築家展においても、モニュメンタルな高層ビルの例より、介護施設やシェアハウスなど、より社会と直結した共用スペースの創造に面白さがあったようだ。A/D/Oの存在もオープンでフレキシブル。そしてカッコいい。何よりもプロとアマが交流できる刺激的なスペースだ。今後の展開に期待したい。(藤森愛実)

A/D/O
A New Creative Space
for Designers
■1月27日オープン
■29 Norman Ave., Brooklyn
www.a-d-o.com



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